TOEIC満点でもスピーキングを怖がるワケ 日本の英語教育を変えるキーパーソン ソレイシィ(3)

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スピーキング=自分をさらけ出すこと!?

安河内:TOEICのリスニング、リーディングで満点の990点を取っている人でも、その大半がスピーキングテストを受けようとしないんですよね。代わりにTOEICを何回も繰り返して受け、満点を取り続けようとする。でも、スピーキングテストは頑として受けない。

スティーブ・ソレイシィ(Steve Soresi)
ソレイシィ研究所代表CEO
1968年、米ワシントンD.C生まれ。青山学院大学大学院国際政治学研究科博士課程(PhD.)修了。英語教育研究機関である同研究所の代表として、企業や一般向けの英語セミナーや講演会などを開催するほか、ビジネスブレークスルー大学教授、NHKラジオ『英会話タイムトライアル』講師を務める。独自のスピーキングテスト「SPM Interview Test」を開発した。主な著書に『英会話ピッタリ表現でぃくしょなりぃ』(語研)、『英会話1000本ノック』(コスモピア)、『ネイティブなら日本のきちんとした表現をこう言う 英会話きちんとフレーズ100』(アルク)などがある。最新刊は『英会話1000本ノック 本番直前編』(コスモピア)。

ソレイシィ:何と言うか、違う道に入ってしまっていますよね。TOEICのペーパーテストはそもそも、英語での「コミュニケーション能力」を間接的に推し量るものだったはずなのに、900点超えの人でも、話すとなるとまったくダメな人がいます。

日本の英語学習には、こんなギャップ、すき間みたいなものがずっと存在しているように感じます。こういう人たちは、英語の勉強を長年やってきて、一定の知識もありますから false beginner(見せかけの初心者)なのです。スピーキングやコミュニケーションの経験が少ないだけで、実際は英語の勉強を何年もしていて、全然初心者ではない。

ただひとつ言えるのは、スピーキングテストを受ける際、特に日本人はある心理的な壁を越えなければならないかもしれない、ということです。テストでしゃべるときに、ちょっと演技したり、または自分自身をさらけ出したりするからです。画一的な答えが求められるわけではないので、自らの言葉で、自分らしく答えればOKなのです。カラオケしたり、踊ったりするのに似ている部分もあるかもしれませんね。一種のパフォーマンスなんですよ。

要は、「舞台に出て固まらずに、さっと言葉が出てくるようにする」ということ。簡単ではないと思います。心理的な壁が高くて、人前で英語を話すことができない人も多くいますから。

海外旅行の体験談で、「私のお父さんは、海外に行っても一言も英語を話してくれない。Water, please! だけでいいから言ってよ」とフラストレーションを感じるという話を聞いたことがありますが、これはお父さんが英語をわからないわけではなくて、心理的な壁のせいで一言も話せなかっただけですよね。

TOEICスコアが高得点の人でも、「高得点なのにしゃべれないの?」と言われるのが怖いというのがあると思います。すごくかわいそうなことですけれども。私がイメージするスピーキングテストに「相手との対面」があるのは、そういう壁をなくすという意味合いがあるのです。

それから、私が開発したSPM(Sentences Per Minute/1分間当たりの発話率) Interview Testの大事な側面として、「スコアの透明性」があります。

次ページ基準は1分間当たりの「発話率」と「雄弁さ」
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