「コロナ禍の夏の甲子園」に抱く違和感の正体 交流試合の「150球熱投」は賛美すべきものか

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甲子園の常連校でも「3年生優先」を貫いた学校もあったが、公立の中堅校でも「ベストメンバー」で試合をした学校もあった。

私学の中には、1学年で優に50人を超す野球部員を抱えている学校がある。ベンチ入りの枠が多少増えても、試合に出ることなど夢のまた夢という3年生もいるのだ。彼らの中には、7月に退部届を出した生徒もいる。

大人たちの「3年生の思い出づくりに」という思いは「親心」というべきものだっただろうが、高校野球の現場の思惑はさまざまだったのだ。

交流試合で150球を一人で投げた投手

夏の甲子園の代替として、8月には「交流試合」が行われた。今春の選抜大会への出場が決まっていた32校が、甲子園でそれぞれ1試合ずつを戦うというものだ。この大会も無観客試合。優劣を競うものではなく、「思い出づくり」だったはずだ。

この大会は、ベストメンバーで戦うチームが多かった。何といっても甲子園であり、「3年生の思い出づくり」だけではないと思った学校が多かったのだろう。

高校野球は昨年11月に「7日間で最大500球以内」という「球数制限」が導入された。この数字自体は「実質的な“投げ放題”にすぎない」という批判はあるが、それでも投球過多、投球障害に対する意識は以前より高まったはずだ。

しかしながら、交流試合では100球を優に超す投球数を1人で投げた投手がいた。

この大会は真剣勝負ではなく、あくまでエキシビション。日本の高校球児の代表として、選手に「有終の美」を飾ってもらうのが目的だったはずだ。

メディアやプロのスカウトの目があったにしても、炎天下で150球近くも投げさせる必要性があったのだろうか。故障のリスクを勘案すれば、投球数がかさめば交代させるべきだったのではないか。

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