アメリカの雇用が甚大な喪失から反転するわけ 新型コロナ不況と過去の不況との違いとは

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リーマンショック後の雇用喪失が完全に復元されたのは景気の「山」から起算して78カ月目となる2014年5月だった。これを今回に当てはめると2020年2月から78カ月後の2026年7月という話になる。ちなみにFRB(連邦準備制度理事会)が利上げ着手に成功したのは2015年12月だったので、雇用の完全復元からさらに1年半の様子見を経て利上げに至ったことになる。これを今回に当てはめると2028年1月だ。

こうして過去の経済ショックについてのデータを見れば見るほど絶望的な気持ちになるが、薄日を見出すことができないわけではない。というのも、サブプラムショックやリーマンショックは文字どおりバブルの崩壊であり、その結果として米国の家計部門が過剰債務を背負い込み、その調整が長引く過程で米国ひいては世界が低成長を余儀なくされた。

だが、今回のコロナショックはマクロ経済における不均衡の蓄積がバブルを生成し、崩壊に至るといった典型的なパターンをたどったわけではない。それゆえ、家計や企業が債務返済に躍起となり消費・投資が停滞するといったいわゆるバランスシート調整の恐れはない。もちろん、ハイイールド債やレバレッジドローンなど、長期安定が続いたゆえの不均衡は相応にあったが、米家計部門の住宅ローンほどの規模感で議論されるものではない。

要は感染症との向き合い方次第

今回の不況はあくまで感染症を理由とした強制的な経済活動の停止であり、あえて言えば、「故意的に引き起こされた不況」である。そのため、感染症の収束にメドがつけば、その戻りはバブル崩壊後の足取りよりも軽くなるはずである。現状では今年の秋冬に対する警戒から消費・投資意欲が高まりにくく、貯蓄過剰に傾きやすいが、それも何をきっかけに行動様式が変わるかは読めない状況だ。例えば、ワクチン開発と実用化にメドがつくだけでもかなり変わるだろう。

よく戦時中に比喩される今次局面だが、戦争のように社会インフラが破壊されたわけではない。経済・金融情勢の正常化は感染症への向き合い方に依存しており、非線形に悪化することもあれば、好転することもあるというのが実情である。必然的に景気回復ペースはバブル崩壊後のそれとは同じではないだろう。

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