アメリカの雇用が甚大な喪失から反転するわけ 新型コロナ不況と過去の不況との違いとは

拡大
縮小

既述のとおり、3月から4月にかけて2000万人以上も失われた非農業部門雇用者数だが、8月時点でその半分は復元されている。

もちろん、まだ1000万人以上の雇用が失われているので何の慰めにもならないが、リーマンショック後の景気後退局面では非農業部門雇用者数が前月比で増勢を取り戻すまでに「山」から2年近くかかっており、安定的に雇用増加の軌道に乗り始めたのは2010年11月頃(すなわち「山」から約3年後)であった。この点が直ぐに雇用増加の軌道に戻っている今次局面との大きな違いである。

悲観に支配されないことも大事

かかる状況下、「意外にコロナショックは早く終わるかもしれない」というアップサイドリスクを警戒しつつ、資産価格の騰勢やその後の大幅調整に着目する論考が一部で出始めているのは根拠のない話ではない。未曽有のショックであるからこそ、どういった政策がどの程度のアクセルないしブレーキになるのか想像もつかず、それゆえに資産価格の振幅が大きくなる展開は不可抗力と言える。

「実体経済の深手」に絶望するばかりではなく、過去の局面と比較した上で、何か違いを見出すことができないのか。その違いは資産価格にどのような影響を与えそうなのか。悲観に支配されず、客観的な視点と共に先行きを展望していきたい。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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