アフガニスタン支援へ50億ドル拠出、民衆に届く支援を実現できるか
このためオバマ大統領は09年12月に米軍の約3万人の増派を決定したうえで、欧州や日本へのいっそうの貢献を求めた。しかし、欧州はアフガニスタンへの増派に消極的なうえ、日本がインド洋給油活動から撤退したことで、オバマ戦略の基礎が揺らいでいる。
撤退の代償は50億ドル
野党時代の民主党はインド洋給油活動撤退を主張する一方で、小沢一郎代表(当時)が、持論の国連中心主義の立場から、国連安全保障理事会決議があるISAFには陸上自衛隊を派遣しても構わないという意見を表明していた。
インド洋給油活動を否定する民主党が、より人命のリスクの大きいISAFへの参加を唱えたことは、当時の自民党政権を驚かせた。
だが、与党になってISAF参加という声は聞こえてこない。連立のパートナーである社民党への配慮からだろう。
ある外務省幹部は、「インド洋給油活動は日本にとって安上がりで、しかも人命のリスクの少ない国際貢献だった」と指摘する。
日本がインド洋給油活動から撤退する状況が見えたとき、その代償として米国が求めたのはアフガニスタン復興支援への資金提供だった。日本がODA(政府開発援助)によりアフガニスタンに提供する金額は5年間で50億ドルと日米合意が形成された。09年度第2次補正予算が1月28日に成立したことから、日本のアフガニスタンへの資金協力が始まることになった。
日本の50億ドル拠出により、アフガニスタン戦争をめぐる日米の葛藤はとりあえず終息した。50億ドル(90円換算で約4500億円)という金額は大きい。09年11月に国民の注目を集めた事業仕分けによる予算の概算要求削減額9692億円(政府の発表数字)の約半分に相当する金額だ。加えてアフガニスタンの一般的な建設労働者の日給が2~3ドルという物価の差を考えると現地の感覚では天文学的な数字になるだろう。