キオクシア、時価総額「2兆円上場」に潜む死角 東芝の経営危機から3年、NANDで成長なるか

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縮小

営業赤字の背景には、半導体メモリというビジネスの大きな特徴である「価格の乱高下」という事情がある。性能による差別化が難しいためにコモディティ化しやすく、価格競争にさらされやすいのだ。スマホ市場の冷え込みや景気悪化など需要そのものが縮小したり、顧客が在庫を積みすぎることによる需給バランスの崩壊がつきものだ。

サムスンなどの大手が採算度外視の量産に走り、価格を意図的に下げることでライバルを追い詰めることもある。実際に2018年後半から2019年にかけては需給バランスが崩れ、NANDの価格は大きく下がった。キオクシアの2019年4~9月期の業績は、製造原価が売上高を上回る「原価割れ」の事態にまで追い込まれた。

サムスン、SKとの違いは何か

キオクシアの想定時価総額は2兆円を超えるが、世界を見渡すと見劣りがする。ライバルのサムスン電子は約30兆円、SKハイニックスは約5兆1000億円、アメリカのマイクロン・テクノロジーは約5兆4000億円にのぼる。

その違いは製品ポートフォリオにあり、キオクシア以外はNANDだけでなく、DRAMと呼ばれるメモリも生産している。DRAM市況の変化も激しいが、製品を2種類持つことで業績への影響を抑える効果ある。「NAND一本足打法」のキオクシアはその分リスクが高い。

足元のNAND市況は徐々に価格を持ち直しており、2020年1~3月期の業績は、1年ぶりの営業黒字を取り戻した。新型コロナウイルスによる影響も懸念されたが、データセンター関連需要は顕在で、2020年4~9月期も営業黒字を確保できる見通しだ。その意味では、今回のIPOを絶妙なタイミングと見る向きも多い。

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