キオクシア、時価総額「2兆円上場」に潜む死角 東芝の経営危機から3年、NANDで成長なるか

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キオクシアの主力製品は、半導体メモリの中でも「NAND型フラッシュメモリ」と呼ばれるものだ。USBメモリやSDカードのような記憶媒体のほか、スマートフォンやタブレットにも多く使われる。

近年はデータセンターやパソコンでもHDD(ハードディスクドライブ)の代わりにSSD(ソリッドステートドライブ)というNANDを使った記憶装置が使われることが増えている。ゲーム機でも、今年末商戦に発売されるソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション5」や、マイクロソフトの「XboxシリーズX」にも搭載される。データセンター向けは5Gやテレワークの拡大を背景に今後も需要の拡大が期待される有望市場だ。

巨額投資競争に耐えられるか

高性能なNANDを製造するポイントは、限られたスペースにいかに大量のデータを書き込めるかだ。それには半導体デバイスの微細化技術が欠かせず、現在は回路を縦方向に積み上げる「3次元化」の競争が激しくなっている。

イギリスの調査会社オムディアの南川明シニアディレクターは「前の世代では弱かったが、キオクシアの製品はライバルのサムスン電子などと比べて製品生産の歩留まり率が高い」と話す。歩留まり率が高ければ、それだけ効率的に生産することができ、競争を優位に進めることができる。

では、キオクシアの未来は順風満帆なのか。そう簡単にはいかない事情もある。

1つは巨額の設備投資を続けられる財務的な体力だ。製品の性能差が少なく、量産効果が必要なメモリ業界では巨額の設備投資が必要不可欠だ。そのため、NANDでサムスンに次いで世界2位のシェアを誇るキオクシアも、毎年数千億円規模の設備投資をしてきた。現在は岩手県北上市に新しい工場を建設。設備を導入してすでに生産を開始している。

上場決定が発表された8月27日、キオクシアは中長期の事業目標を発表。その中で、25~30%の営業利益率(一時費用を除く)と売上高比で30%未満の設備投資を目標にするとした。

キオクシアの2020年3月期は売上高9872億円に対し、営業利益は1731億円の赤字。設備投資には約3500億円を投じ、フリーキャッシュフローは1932億円の赤字になってしまった。

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