「都市封鎖」武漢の作家がつづったあの日の真実

新型ウイルスは中国社会の病巣もあぶり出した

新型コロナウイルスの震源地となった中国・武漢市は一時封鎖された(写真は2020年2月、Featurechina/アフロ)
新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、中国・武漢市が封鎖された2日後、武漢在住の著名作家・方方が自身のブログ上で武漢の実情を伝える日記を書き始めた。その真摯な筆致は、不安を抱える多くの中国人の心に響き、読者は“億単位”とも言われた。一体、封鎖下の都市で何が起きていたのか。『武漢日記 封鎖下60日の魂の記録』より、封鎖直後の混乱した様子を綴った冒頭部分をお届けする。

残酷な現実が目の前に広がっていた

1月30日(旧暦1月6日)
彼らに責任転嫁の余地はない 

今日は快晴だ。いちばん気持ちのいい冬の趣がある。この季節を楽しむには最高の日と言えるだろう。しかし、感染症が人々の心を傷つけている。せっかくの絶景なのに、鑑賞する人はいない。

残酷な現実が依然として目の前に広がっている。起床後、情報に目を通した。ある農民は真夜中に、市内に入ることを拒まれたという。どんなに頼んでも、見張り役が通してくれなかった。寒々とした深夜、農民は結局どこへ行ったのだろう。とても心が痛む。感染症防止の措置は、もちろん正しい。だが、情け容赦のない対応はまずいと思う。

どうして、役人はみな1枚の通達文書で教条的に動くのか? 見張り役の1人がマスクをつけて、農民を空いている部屋に案内し、ひと晩泊めてやればいいではないか? また、父親が隔離されたために5日間、1人で家にいた脳性麻痺の子供が餓死したというニュースもあった。

感染症は、無数の世相を暴き出す。中国各地の官僚の水準も暴き出す。さらに、私たちの社会の病巣も暴き出す。その病気は、コロナウイルスよりも恐ろしく、もっと長期に及んでいる。しかも、治癒(ちゆ)が見通せない。医者がいないし、治そうとする人もいない。そう考えると、とても悲しい。

数分前に、友人が教えてくれた。私たちの職場の若い同僚が、発症2日目で呼吸困難になり、感染が疑われるという。しかし、確認がまだなので、入院もできない。とても誠実で真面目な若者なのだ。彼の家族のことも、よく知っている。ただの風邪で、コロナ感染ではないことを願うばかりだ。

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