人材難の鉄道業界、「外国人活用」で解決するか 言語の壁から技術伝承まで問題は山積みだ

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また、同社の経営ビジョン「変⾰ 2027」の中で「国際鉄道⼈材の育成」を掲げており、それに沿った形で2019年時点には、「JR東⽇本 Technical Intern Training」というプロジェクトの下、ベトナムから技能実習生11名の受け入れを公表している。

その中にはベトナム鉄道からの人員も含まれており、現在の技能実習制度を活用した3年間の実習を計画しているとのことで、業務内容は鉄道車両の冷房装置のメンテナンス業務を担当している。その他、東京メトロではフィリピン運輸省職員を研修として受け入れるなど、近年その動きが活発化しているともいえる。

在留資格の制度がネック

外国人労働者が日本国内で就労する際に必ず問われるのが在留資格だ。まず、グローバル企業が海外転勤を行う場合の「企業内転勤」、大卒やある程度の就労実績・スキルをもとに資格審査がなされる。「技術・人文知識・国際業務」など要件はさまざまではあるが、いずれも一定のキャリアや学歴が問われる、いわゆるホワイトカラーの職種だ。また、先述のJR東日本におけるドイツ鉄道やミャンマー国鉄からの研修制度、あるいは東京メトロでフィリピン運輸省職員を受け入れについては、「研修」の在留資格で行われたものだ。

海外人材の技術や知見の共有も大きな目的の一つであるが、しかしながらこれらの多くはあくまで「研修」という枠組みであり、腰を据えて働くことが目的ではない。もちろん期間もあらかじめ定められており、この場合最大でも1年間となっている。基本的には実務につくこともできないので、労働力とはいえない。

一方、昨年より検討されている「技能実習」にて労働することに関しては、「研修」とは在留資格区分が異なり、更新も含めて最長5年間もの就労期間がある。ただし、「技能実習」のカテゴリーで働きたい場合、移行対象職種・作業一覧にて定められた現在82職種148作業でなければ技能実習の資格で就労できない決まりになっている。先述のベトナムからの実習生については、対象職種が「冷凍空気調和機器施工」という枠組みに当てはまっており、研修ではなく実務として車両の空調メンテナンスを中心に作業している。ただ、鉄道への関わり方でいえば、まだ間接的なものである。このほど検討されている「鉄道施設保守整備職種」というのは、線路上の保線作業を行うもので、もっと直接的な業務である。

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