人材難の鉄道業界、「外国人活用」で解決するか 言語の壁から技術伝承まで問題は山積みだ
この区分については実習計画によって厳しく定められている。例えば、昨年日立製作所は国が認めた技能実習計画と異なる業務を行わせていたことにより所轄官庁から改善命令を受けた。
このように技能実習において計画と異なる業務をすることは許されておらず、違反した場合は処分対象となる。こういった制度も安易に外国人採用を進められない要因の一つでもある。
鉄道現場での課題は山積み
技能実習生のうちの国籍の多くを占めるベトナムは、日本とは正反対に人口約9000万人のうち約8割が40歳以下と言われる。であれば、法令さえ整えば日本に足りない働き盛りの優秀な人材を、国も企業もなんとか採用したいのも事実だ。
しかし、技能実習にはさまざまな課題が多いことも知られている。制度の不透明さから低賃金での労働・劣悪な生活環境など、人権侵害の温床とまで言われている。ただし、先述のJR東日本におけるベトナムの技能実習生については、賃⾦・福利厚⽣を社員と同等とするとしておりひとまず安心ではあるが、全体的にこの辺りがクリアになることも望まれている。一方、鉄道現場では当然のことながら法規類・マニュアル、外国人材を受け入れられる労務環境を整えてからでないと採用も進められないのも当然だ。
最大の問題は言語・コミュニケーションだ。技能実習生には日常会話ができる要件があるが、その基準も不明確で、さらに社会経験のないような人材が入るため、言語の問題もさることながら日本での商慣習や新しい業務までも習得しなければならない。ただでさえ新しい環境に慣れることは難しいのに、それが異国の地であると余計に多くのハードルが待ち受けているだろう。それに合わせて文化・慣習の違いも大きな影響を及ぼし、鉄道業界では安全に対する確認行動の励行、時間を守るなどの基本的なルールを教示することから始めなければならない。
ほかにも「技術の伝承」も大きな課題点である。そもそも技能実習制度というのは、人材育成を通じた開発途上地域などへの技能移転による国際協力の推進が目的となっている。つまり帰国してそのノウハウを活かすのが表面上にある。「技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議」の中で、技能実習第3号の修了時には作業長レベルを目指すことも含まれており、そこには「高度な作業を実施できること、あるいは各作業を従事員に指導できること」が検討されているようだ。今後、技術伝承がものを言う保守整備の職種で、目下の人材不足解消と後継者育成という両面を、制限の多い技能実習の中で、次にバトンがうまく渡るのかも懸念点ではある。
多くの事業者で人材不足問題があるものの、穴埋めのように足りないピースを埋められるという簡単な話ではなさそうだ。一つの伝達ミスから大きな事故につながる可能性もある鉄道だけに、慎重なルールの制定が求められるだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら