もう1つの要因が、フリートと呼ばれるレンタカーや法人向け販売の少なさだ。この分野は一括で大きな台数が販売できる反面、値引き競争に巻き込まれやすく、不況にも弱い。日産はカルロス・ゴーン元会長の下、アメリカ市場の販売拡大を図るため、フリートを積極的に展開した。その結果、コロナによる法人需要の急減を受け、販売減に苦しんでいる。
ただし、シェア拡大が順調に進むとも限らない。7月のアメリカでの販売でややブレーキがかかったからだ。3月、4月は前年同月比で40%以上の減少となったが、6月は12.4%減まで回復していた。だが、7月は19.7%減と再び減少幅が拡大している。
この要因が在庫の少なさだった。アメリカでは通常、ディーラーが車の在庫を抱えて販売する。一般的な自動車メーカーではおよそ60日分の在庫を持つ。スバルのディーラーはもともと、20日~30日分程度の在庫しかなかった。
これはコロナ前まで需要が旺盛で生産が十分に追いついていなかったからだ。このため、中村社長は2020年3月期の中間決算の会見時(2019年11月)に、「(アメリカの)在庫を最低1カ月から最大1.5カ月分程度確保したい」と説明していた。
操業停止で在庫がさらに減少
ところが、コロナが世界を襲い在庫積み増しの目論見が狂った。
アメリカの現地生産工場であるSIAに加え、一部車種をアメリカにも輸出する群馬製作所も一時操業を停止したため、約17万台の減産となった。一方、同じ期間の販売台数は13万台程度の減少に収まり、もともと少なかった在庫がいっそう減少した。
8月4日のアナリスト向けの説明会で、スバルは7月のアメリカの落ち込みについて「売れ筋のフォレスターやクロストレックを中心に在庫水準が極端に落ち込んだ影響」と説明した。7月時点の在庫は15日分弱まで低下したもようだ。ただ、7月上旬から、群馬製作所とSIA、すべての自動車生産拠点で生産をおおむね平常化している。休日出勤も平年並みの水準で行っており、文字どおりのフル操業状態にある。部品在庫も可能な限り積み増すなどして、生産が滞らないように細心の注意を払っている。
しかし、アメリカの需要回復が続けば、過少在庫を早期に解消することは難しい。そうすると、在庫不足からディーラーによっては売り逃しが出てくる可能性もある。第2波の影響が懸念される中、順調に生産を続け、どこまで在庫を積み増せるか。シェア5%を目指すうえで、気が抜けない状況が続きそうだ。
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