Appleと対立しても「フォートナイト」余裕な訳 この争いは「YouTuberの事務所脱退」と似ている

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以前から、ストアの手数料の高さに対して批判的だったEpic Games。確かにフォートナイトほどの売り上げと知名度を持つゲームを握っていれば、今回の挑戦はリスクも少なく、悪くないものだろう。

しかし、フォートナイトがここまで成長するためには、やはりストアの力は欠かせなかったはずだ。これまでAppleが提供するツールや販路などのメリットを得ており、しかも規約に同意したうえで使っていた。成長を果たした今になってストア側を批判することは都合がよすぎるようにも見える。

30%の手数料は、デベロッパーにとって非常に高く感じることはわかる。しかし、多くのデベロッパーに恩恵を与えてきたことは事実であり、一概に高額すぎるとばかり言えないだろう。

なお、フォートナイトほどになったら自社サイトで配布すればいいのではという意見もあるが、これには問題もある。検索結果から偽のアプリをインストールしてしまい、ユーザーをセキュリティ上のリスクに巻き込む可能性があるためだ。

「YouTuberの事務所脱退」と似ている

このEpic Gamesとストア側の戦いは、「YouTuberとYouTuber事務所との問題」と似ている。YouTuber事務所は、YouTuberが不慣れなスポンサー企業などとの契約部分などを担当することからスタートしたが、広告収入の20%前後を受け取っていることは同じだ。

事務所は、一般的にタイアップ案件の獲得や撮影スタジオ準備、税務処理などの雑務を担当している。しかし、YouTuberが有名になればなるほど、得られるサポートと手数料が見合わなくなってくる。次第に20%前後の手数料を高く感じ、木下ゆうかなどの著名YouTuberの事務所離脱が相次いでいるところも似ている。

YouTuber事務所も、最近は案件ごとにマネジメント手数料を定額とするところも出てきた。これならばYouTuberにとっても再生数が上がれば収益が上がるため、好評のようだ。

Apple、GoogleとEpic Games、悪いのは誰なのか。その問いの答えは、ただそれぞれの立場が違うだけというものではないのか。AppleやGoogleはEpic Gamesを逃すことも、手数料を下げる前例を作ることも望まないだろう。

しかし既に大きく成長したデベロッパーたちが一斉に謀反を起こしたら、条件を飲まねばならなくなるかもしれない。手数料を一律にするのではなく、条件によって変えるなどが落とし所になるかもしれない。

Epic Gamesとストア側の戦いはすぐに決着はつきそうにない。今後も注目していく必要がありそうだ。

高橋 暁子 成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

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たかはし あきこ / Akiko Takahashi

書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。 SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)など著作多数。『あさイチ』 『クローズアップ現代+』などメディア出演多数。公式サイトはこちら
 

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