「パインアメ」圧倒的に愛され続ける定番の裏側 原点忘れず常に変化を遂げ国民的商品に育った
狩野:大きさのほかに変わったのは?
上田:味、色、形等も変化していきましたが、特に覚えているのは“色”です。合成着色料のほうが色はよく出ますが、体に悪いものは一切使いたくないというスタンスがあります。最も安全な天然着色料の黄色に落ち着きました。
三神:“定番”というものは変えてはいけない部分がありながら、飽きられてもいけない。矛盾していますが、どのようにバランスを取られてきましたか。
上田:スーパーやデパ地下、コンビニなどに自ら出向き、世の中の変化を敏感に感じながら、どこの部分を変えるかを常に考え、変化は絶対にわからないレベルで、少しずつ変えています。アメは必需品ではなく嗜好品です。必ず要るものではないので、大きく変わるとリスクは大きすぎます。ゼロか100になる確率が高いので、わからないように手加減しています。
三神:お菓子業界の時代の流れでは、“ジャンボパック”という形で、量で勝負する時代を経て、テクノロジーを駆使して装飾的で凝った作りや歯応えなどで勝負する競争もありました。その後、甘いものを食べることの罪悪感から、ダイエットで甘いものを控えたいと考える消費者も出てきました。この中で、いつ、どのタイミングで何を変えるかを、どのように決めているのでしょうか。
変わらないことは良いことではない。
上田:消費者と密接している得意先の小売業から、お客様の声を聞いて変えています。例えばカロリーの問題では、味を維持させながらどこまでカロリーを抑えていけば良いのかという課題から、新しい問題が立てられます。また、“たくさん入っていれば良い”、という問題ではなく、「食べ頃適量サイズ」というものもあります。できるだけ早く召し上がっていただけるような大きさに、今も進化し続けています。
お客様がその時代でどのように変わっていくか。諸行無常なので、“ずっと同じ”ということはありえません。そのため「お客様のどこが変わっているか」ということに早く気づくことが大切です。
三神:お客様よりちょっと早く時代の変化に気づかなければいけませんよね。そして、売れているのに変えることも大切。手応えは、毎回感じるものですか。
上田:失敗もありますが、変えないと駄目です。変わらないことは良いことではないのです。常に適切に変わることが良いことだと考えます。売り上げの数字も大事ですし、どこでどんな売れ方をしたのか、その数字の質がどう変わったかということをヒアリングすることで、次のステップに生かされます。