「パインアメ」圧倒的に愛され続ける定番の裏側 原点忘れず常に変化を遂げ国民的商品に育った

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三神:2013年に売り上げが少し落ちていたことがあったそうですね。

上田:コンビニエンスストアの激戦期に入ったときで、競争に負けたんです。スーパーの場合は、多くて100アイテムほどのアメが並んでいますが、コンビニは棚に商品を置ける量が少なく、多くて10アイテムほどなので勝ち抜くのは大変です。

コンビニの棚取り合戦は熾烈だ(写真:NHK大阪拠点放送局)

三神:それでも、あえてコンビニに切り込んだ理由は?

上田:圧倒的な店舗数と、今のお客様と直結している販路という点が魅力的です。コンビニは1970年前後に登場し、時代の流れに合わせて急激に店舗数を増加してきました。スーパーの段階では“量”を売るだけの商いだったのが、コンビニになって“質”が求められるようになりました。

三神:スーパーとコンビニではどちらが売れているんでしょう?

上田:スーパーのほうが多いです。コンビニは激戦区なので、必ずしもはまるという保証はありません。

三神:スーパーは、一般的に日中に買い物に出かける女性の需要が多いのに対し、コンビニは24時間営業で、老若男女が訪れるという大きな違いがあります。今までの定番品を同じように打ち出していくには、やり方も変わってくるのではないかと思います。

上田:最近は男性をターゲットにした商品もありますが、弊社のお客様のほとんどが女性や子供。コンビニでも、それは変わりません。

三神:「コンビニジャック」という言葉もありますが、棚を掌握できるか。どの場所にどのぐらいの幅で置かれるかが重要です。

上田:コンビニの棚を見ると、女性や子供の目線に合わせて、比較的低い位置にパインアメが陳列されており、上のほうには苦そうな喉アメが並べられています。

「自社の商品の強みや、その強みをどのように強化していくか、そして認知度を高めるためにどういう活動を取ろうとしているのか」という“ブランディング”が必要になってきます。

売り上げ95%を燃やすはめになって得た教訓

三神:今でこそ揺るぎない定番商品となったパインアメですが、かつて2002年には無認可の製造補助剤を使っていたことで、商品の自主回収を迫られたことがあったそうですね。

上田:販売が禁止され、売り上げの95%を燃やして廃棄しなければならなくなりました。

三神:看板商品の大黒柱が崩れてしまったわけですね。ここからどのように信用回復をされたのでしょうか。

上田:得意先から「早く作りなさい、24時間作りなさい。代わりに、自分たちが定番を売ります」と言われました。フル操業で商品をカバーし、その後は売り上げをリカバリーしました。得意先がわが社のいちばん大事な定番を守ってくださったことが、大変ありがたかったです。社内の人間や仕入れ先の方々もずいぶん協力してくださり、そのチーム力のおかげで乗り越えられました。

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