過熱するスマートハウス開発の意外な盲点 従来のスマートハウスは非常時に役立たなかった!?

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一方、経済性を追求するモードを選択すると、昼間は大容量PVで生活し、余った分は電力会社に売電。朝晩は電気料金が割安な夜間のうちにEVに貯めた電気を使う。光熱費と自動車燃料費を合わせると、年間で約68万円の節約が見込めるという。

国は2020年をメドに、創るエネルギーと消費エネルギーの年間収支ゼロを目指すZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)住宅を標準的な新築住宅として普及させる目標を掲げている。ところがZEH住宅でも、蓄電で電力の有効利用ができないとエネルギーを自給できる割合は約50%以下にとどまるのが現状。そのため積水化学では、ZEH住宅を超えた「電力不安ゼロの『自給自足の家』がスマートハウスの最終目標」(関口常務執行役員)ととらえており、今回の商品投入もその方針の一環といえる。

過熱するZEH開発競争

大手住宅メーカー各社が国策を先取りしてスマートハウスの開発を急ぐ背景には、人口減少で住宅市場の規模縮小が懸念される中、相対的に優位にある開発力をテコに、高付加価値製品の投入で顧客を囲い込む狙いがある。大和ハウス工業も2020年度をメドに、住宅内で消費するエネルギーを100%自給する「エネルギー自給住宅」の商品化を目指し、開発を進めている。

さらに、足元を見ても、戸建て住宅業界をめぐる環境は厳しさを増している。消費増税前の駆け込み需要の反動減が長引く中、各社の月次受注は前年同月比割れが続いている。国土交通省が4月30日に発表した3月の新設住宅着工件数は前年同月比2.9%減少と、19カ月ぶりにマイナスへ転じた。

積水化学が今回投入した商品も、たとえば5.08キロワットのPVとHEMS、EVパワコンの3点セットでシステム価格が356万円(税抜き)のところを、自宅の電力状況についてデータを提供するモニター制度を導入。モニター協力金、公的補助金を差し引くことで、実質負担額を従来のPVとHEMS、定置型蓄電池のセット料金と同じ236万円に抑えている。

環境配慮機能の強化や災害への備え、光熱費や燃料費負担の大幅軽減をアピールするなど、住宅各社の需要掘り起こしへの取り組みが一段と激化していきそうだ。

水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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