彼岸、無、来世「故人」が書き残した本気の死後観 死と向き合った彼らはネットに言葉を連ねた

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三途の川を渡ると彼岸=あの世に行くというのは、日本ではおなじみの死後観だ。それまでの日記で信仰や宗教について言及していないことから、Bさんがこの死後観を熱心に信仰している雰囲気はない。

一般的な死後のイメージに仮託して、自分を含めた関係者の感情を収めているような印象を受ける。そこまで意識的に死後のことを考えない、いわばライトな死後観といえるだろう。ネットに表出している死後観としては比較的多い部類だ。前述のAさんの家族も近いところがあるかもしれない。

一方で、積極的に死後観を構築していったとみられる例もみられる。

「万物とひとつになる」「あなたの記憶の中に生きる」

乳がんにより2015年に30代で亡くなった女性クリエーターのCさんは、死の直前までブログで病状を伏せていたが、最後に病名を明かしてこんな文章を残している。

「私はもともと人が死ぬことを悲しいという風に思っていませんでした。むしろ卒業というような喜ばしいことだとどこかで感じて生きていました。なのでそれもあり全然死に対しての恐怖もなくつらさもなかったです。周りで支えて下さった方には寂しい気持ちにさせてしまったかもしれません。ですが私は今とてもワクワクしています。皆さんとひとつになれるような気がするからです。私の身体はなくなっても、私は存在します。だから悲しまないでください」

同じく30代で脳腫瘍を患った男性Dさんは、告知をきっかけに2011年に闘病ブログを始めた。

状態が悪化した頃には自らの死を覚悟した記述を何度も残しており、末期には二度とブログに触れられなくなることを考えてか、お別れの投稿を2回アップしている。そして翌年に亡くなった。本当の最期のあいさつとなったのは、その後に家族によってアップされた投稿だ。Dさんが病床で愛用していた携帯電話のメモリには、脳腫瘍で苦しみながらも周囲を気遣う言葉が並んでいたという。

「自分は肉体を失いますが、いつも皆さんを見守っています。

良ければたまに思い出してくださいね。

自分は皆さんのなかでも生き続けることができます」

次ページ細かく表現しないが存在することは確信している
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