アウディ「TT」22年目で生産終了となる事情 革新的デザインのクーペがその役割を終える時
2020年7月14日、アウディ・ジャパンは50台限定のアウディ「TTロードスター ファイナルエディション」を発表した。発売は9月15日だ。名称からも察せられるように「TTロードスター」は、このファイナルエディションが最後の限定車となり、2020年内に生産終了となる。
「TTクーペ」の生産は以後もしばらく継続されるようだが、TTシリーズは現世代で終了となり、次世代はない。代わりに後継モデルではなく、別の電動車が投入されると言われている。
TTシリーズは、1998年にTTクーペ、その2年後となる2000年にオープンバージョンとなるTTロードスターが追加。2度のモデルチェンジを経て、20年以上続く人気のシリーズとなった。
では、このTTシリーズが築いたものは何であったのだろうか。
アウディのマイルストーン
TTシリーズのコンセプトが発表されたのは、1995年。円をモチーフに研ぎ澄まされた造形は、当時としては非常に衝撃的であった。戦前のドイツの芸術運動であるバウハウスを彷彿させる、まるでアート作品のようなデザインであったのだ。
その3年後となる1998年、量産車がコンセプトカーそのままの姿で発売された。誰もが「アウディから、すごいデザインのクルマが登場した」と驚いた。ただし、あまりに極端な造形であったため空力特性が悪く、超高速域で不安定になる問題が露見。慌てて空力を整えるリアウイングが追加された。しかし、そんな問題があっても、TTシリーズは世界中の注目を集めることに成功した。
今、振り返ってみれば、TTシリーズはアウディのマイルストーン的な存在であったと言える。なぜなら、当時のアウディは、自身の立ち位置を模索していた真っ最中であったからだ。
TTシリーズが登場する1990年代は、アウディにとって変化の時代であった。1980年代までの「80シリーズ」や「100シリーズ」のような数字のモデル名から、「A4」「A6」という「アルファベット+数字」の名称に変わったのは1990年代のこと。しかし、その変化は迷走のようにも見えた。
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