アウディ「TT」22年目で生産終了となる事情 革新的デザインのクーペがその役割を終える時

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おしゃれ好きな女性が格好いいクルマを好むのは、自然なこと。デートには格好いいクルマがいいと、当時の若い男女はともに考えていたのだ。ほかにもトヨタ「ソアラ」や日産「シルビア」、ホンダ「プレリュード」など、スペシャルティカーは数多く存在し、どれも若者たちの憧れの対象だった。

しかし、流行るものがあれば、廃れるものもあるのが世の常。2ドアクーペのスペシャルティカーというジャンルは、もはや過去のものとなったと言ってよい。

先に挙げたモデル名は、どれも存続していないし、今の国内市場を見てみれば、スペシャルティカーに該当する2ドアモデルは皆無である。トヨタには「86」という2ドアクーペがあるが、スペシャルティカーというより、ピュアスポーツカーだ。

今、スペシャルティカーに取って代わられ、トレンドとなっているのはSUVである。若者の憧れの対象もクーペよりSUVであるし、室内が狭く乗り降りのしづらいクーペよりも、使い勝手に勝るSUVのほうが、デートでも好まれる。

そして、SUVの中にもSUVクーペという、スペシャルティカー的なジャンルも形成されつつある。

アウディも「Q3スポーツバック」でSUVクーペ市場に参入する(写真:アウディ)

BMWが「X6」で先鞭をつけたこのジャンルはさまざまなクラスに波及し、トヨタ「ハリアー」も新型モデルは「クーペフォルム」をうたう。

そうしてスペシャルティカーからSUVへシフトしていく中で、2019年にはフォルクスワーゲンのスペシャルティカー的存在であった「ザ・ビートル」が生産終了となった。その次が、TTシリーズというわけだ。

「e-tron」は次世代車だが…

TT終了後の工場では、電動車が生産されるという。アウディは今、大きく電動化路線にハンドルを切ろうとしている。ある意味、20年前のようにブランドのイメージを変化させる時期なのだろう。そこに投入される新しい電動車は、あのとき発表されたTTシリーズと同じく、次世代アウディのイメージを牽引するクルマになるのではなかろうか。

すでにアウディは、「e-tron」という電動車を市場に投入している。たしかに技術的には優れているが、デザイン面は無難そのもの。次世代の電動車だからといって、革新性はない。そこで、TTシリーズの代わりに登場する電動車があるのではないか。

TTシリーズの後継となるのだから、それなりの話題性がなければつまらない。世をあっと驚かす、斬新な電動車が生まれることを期待したい。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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