アウディ「TT」22年目で生産終了となる事情 革新的デザインのクーペがその役割を終える時

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1990年代のアウディに迷いが見えたのは、グループ会社であるフォルクスワーゲンが品質をアップしてきたことで、上位ブランドとしての優位性がわかりづらくなっていたからだ。「アウディとフォルクスワーゲンの違いってなんだろう」という印象を持たれたのである。

そんなときに登場したのが、TTシリーズであった。TTシリーズと同じ1998年には、フォルクスワーゲン「ニュービートル」も登場している。ニュービートルは往年の空冷ビートルを現代風に復活させたもので、ノスタルジックでキュート、そして親しみやすさを魅力としたもの。一方のTTシリーズは、モダンでスタイリッシュ。ここにはっきりとフォルクスワーゲンとは異なる、アウディの目指すプレミアム感が提示されたのだ。

そして2000年代に入ると、アウディはプレミアムブランドとしてブレイクする。1980~1990年代とは、比べものにならないほどの人気を得ることに成功したのだ。

スペシャルティカーの隆盛と衰退

1998年の初代モデルから2006年に登場した第2世代、そして2015年からの現行モデルと、3世代にわたってTTシリーズは、アウディのモダンさや斬新さを、わかりやすく示してきた。しかし、そんなTTシリーズも残念ながら現在の世代で終了する。

その主要な理由は、「世の流れ」と言えるだろう。TTシリーズの属性は「スペシャルティカー」である。

1960年代に誕生したフォード「マスタング」をきっかけに生まれたこのジャンルは、アメリカだけでなく欧州や日本にも拡大し、数多くのモデルが作られ、ヒットしてきた。スピードを追求するピュアスポーツカーではなく、スポーティーな2ドアクーペの“格好良い”クルマ。言ってしまえば“デートカー”が、スペシャルティカーだ。

日本でも、1980年代までの昭和の時代は、若い男性だけでなく女性がスペシャルティカーを愛車にすることも、ごく普通であった。昭和世代の筆者のまわりにも、軽自動車ではなく、トヨタ「セリカ」や同「カローラレビン」、ホンダ「インテグラ」などを愛車にする若い女性が数多く存在していた。

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