今後の株価がわかる「2つの経済指標」の読み方 米雇用統計だけ見ると方向性を見誤る可能性も

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しかしながら、コロナ禍では労働市場が被った大打撃を政府の巨額財政支援策が補う構図が鮮明化しているため、政府からの給付金などを含めた包括的データが必要となる。その点、この指標は公表がやや遅いのが難点だが、賃金のみならず年金、配当、失業保険や政府からの給付金を含む社会保険の受取額が収録されており、そこから税金などを控除した可処分所得も把握できるため重要視すべきである。

新規失業保険申請件数の推移には注意

現在までに、アメリカの家計を支えてきた財政政策は大きく分けて3つある。1つは大人1人当たり最大1200ドルの現金給付。2つめは週当たり600ドルの失業保険上乗せ給付(7月末以降は未定)。3つめは中小企業を介した間接的支援としての給与支援プログラム(PPP)である。PPPは中小企業労働者の給与を政府が事実上肩代わりする仕組みであるから、家計支援の側面を持つ。

これら3つの政策サポートを加味したアメリカ家計の総収入は4月が前年比プラス14.0%、5月がプラス8.8%、6月がプラス7.4%であった。4月に2000万人規模の失業発生によって賃金は前年比マイナス7.0%と大幅に減少したものの、政策サポートがそれを埋めてなお余りある貢献を果たした形だ。失業率が2桁%で高止まりするなど労働市場が深い傷を負っているにもかかわらず個人消費が底堅いのは、このような総収入増加が背景にある。

実際、6月の小売売上高は自動車やガソリンなどを除いたベースの数値が過去最高を更新した。今後、金融市場の関心が経済活動再開と政策サポートの段階的終了のバランスに移っていくなか、この指標から得られる情報は多い。金融市場の注目度も高まるだろう。

次いで新規失業保険申請件数であるが、今夏に「悪さ」を働く可能性がある。その第1弾は7月23日発表分で起きた。当該週の公表値は141.6万件と前週比約10万件の増加。それは4月以降で初めての増加であり感染拡大が経済活動再開の妨げになっていることを印象づけ、金融市場にネガティブな影響を与えた。

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