富士ゼロックス、「複写機逆風」でも手応えの訳 在宅でITツールが伸張、中小企業も高い関心

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――ITツールが伸びているということは、売り上げの比重はITソリューションにシフトしているのでしょうか。

シフトしているというより、ITソリューションでも伸ばしていくイメージだ。2021年4月から「富士フイルムビジネスイノベーション」という新社名になる。現在は欧米地域で販売していないが、4月からはまず欧米地域へのOEM供給を中心に事務機器の販売を開始する。

(販売拡大の)具体的な計画はまだ決まっていないが、すでにコロナ環境下でも海外の競合の複合機メーカーとOEM供給の話をして、契約も一部決まっている。ソフトウェアなどITサービスも伸ばしていき、ハードウェアも伸ばしていける。

中小企業のITへの関心が向上

――複合機メーカー各社がITサービスを手掛けていますが、富士ゼロックスとして具体的にどのようなサービスを提供していますか。

たまい・こういち/1952年生まれ。2002年に東京大学工学系研究科にて論文により博士(工学)学位取得。東芝を経て、2003年富士写真フイルム(現・富士フイルム)入社。2016年富士フイルム副社長。2018年から現職。富士フイルムホールディングス副社長を兼務(撮影:今井康一)

例えば、在宅勤務で出てくる問題を解決できる。自宅にいて会社に届いたFAXを見られる「ペーパーレスファクス」というサービスがある。営業職向けには、社外で出張の精算や事務手続きのできる支援をし、オフィスワークを支援するツール「ドキュワークス」もある。

ドキュワークスはホワイトカラーの生産性で問題となる資料作成の時間を半分程度に縮めることができる。作業を簡単にできるので、在宅勤務時の利便性も高められる。累計で700万本売れたが、(新型コロナ影響が出た)この数カ月だけで数十万本と売り上げが急増した。

電子署名サービス「ドキュサイン」も、会社間の契約をオンラインで行うことから増えており、問い合わせは数倍になっている。

――新型コロナによって顧客のITツール導入への意識も大きく変わりました。

緊急事態宣言以降、どの会社もITツールを導入する必要に迫られ、問い合わせが急増した。これまでは大企業が中心だったが、中小企業のITに対する関心が上がった。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

ただ、多くの中小企業は関心があっても、どうすればいいかわからないところが多い。富士ゼロックスは、自治体のIT導入補助金の申請から、ITツールの設定まですべてサポートしている。

中小企業からはセキュリティーを担保するソフトウェアの需要が非常に増えている。緊急事態宣言後も在宅勤務を推奨・継続する大企業が多く、ITサービスへの問い合わせは増えている。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、紙印刷市場の今後や2021年の社名変更後の経営戦略などについても語っている。
劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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