ネスレが仕掛けるオフィスコーヒー客争奪戦 独自のアンバサダー制度を導入
日本のコーヒー消費量は1人1週間あたり平均10.73杯。そのうち2割強は職場や学校で飲まれる(全日本コーヒー協会、2012年、中学生以上79歳までを対象)。
「オフィスでは、コンビニのコーヒーか、自動販売機の缶コーヒーが強い。ネスカフェは家庭では強いが、オフィスでは飲まれておらず、長年の課題だった」(高岡社長)。
アンバサダー制度の導入によって、それが少しずつ改善している。アンバサダーになった男性は「わざわざ外のコンビニにコーヒーを買いに行くよりずっと楽だし、なにしろ安い。オフィスに悪い人はいないので、代金も回収できている」と話す。
アンバサダーに販売したネスカフェが飲まれている場所は「オフィス」(45%)がトップ。そのほか、「病院」(12%)、「カルチャースクール」(3%)など、オフィス以外にも広がりつつある。「想定の倍以上のスピードで広がっている」と、ネスカフェアンバサダービジネスユニットの津田匡保部長は驚きを隠さない。
新商品開発にも活用
アンバサダーの役割は、職場でコーヒーマシンに設置するだけではない。津田氏は毎月のように、ネスレ日本の本社がある神戸や東京にアンバサダーを集め、少人数のグループインタビューやアンケートを実施。新商品のアイデアなどについても意見を求める。「ズバズバと本音を言われることが多い。アンバサダーは(職場の人に)ネスレの製品を広める立場。一般の消費者と違い、責任感が生まれるのだろう」(津田氏)。4月にはアンバサダーの声を反映させた紅茶の新商品「ティーアロマ」が誕生した。
大企業などを対象にマーケティングの支援を行うアジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦取締役CMOは、ネスカフェアンバサダーの仕組みを「非常に効率的なマーケティング」と評価する。アンバサダーになる人は、既存顧客の中でもネスカフェやコーヒーのコアなファンだ。周りの人に宣伝したり、クチコミを企業に返したりする傾向も強い。マス広告に比べるとリーチできる人数は少ないが、その分、着実にファンを増やすことができる。
「テレビCMは数千万人に届くが、全員の心に深く刺さるかどうかは別問題」と徳力氏は言う。「コーヒーのCMを見ても、普段コーヒーを飲まない人は“自分は対象でない”と無視してしまうかもしれない。ただ、職場で自分の知っている先輩にコーヒーを勧められたら、“飲んでみようかな”と思う可能性は高まる」(徳力氏)。つまり、対象人数は少ないものの、クチコミの力で心に深く刺さる宣伝が可能になる。ネスレ日本の場合、テレビCMを併用することで、さらなる認知度向上を図っている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら