「クックパッド」が手掛ける異色の宅配サービス 1品から送料無料で注文できる仕組みを構築
「ただ、積極的にお声がけをしている生産者様もある。実現したいビジョンがあり、食卓を豊かにしたい、価値を提供したいという我々の思いに共感して伴走してくれる生産者様だ」(福崎氏)
例えば、柑橘系なら柑橘系など、ひとつの食材だけにこだわり、さまざまな種類をそろえている生産者。また、食材のおすすめの食べ方をSNSで発信している生産者もある。魚の種類や部位、季節により、煮魚と刺身のどちらに向くのかなどをアドバイスすることもあるそうだ。手塩にかけた作品をおいしく食べてもらいたいという「生産者の思い」であり、消費者にとっては食の楽しみ、豊かさを添えてくれる情報でもある。
今はアプリ上の一部の食材でクックパッドのレシピと連携しているほか、例えば、野菜詰め合わせに珍しい野菜や地域特産品を加えておき、購入者においしい食べ方のレシピを検索してもらうといった工夫も行われている。
「まぐろ解体ショー」をライブ配信
また販売機会を拡大したり、コミュニケーションの場を創出するために、オンラインマルシェなどを定期的に開催している。6月初旬には「先払い型ライブコマース」として、まぐろ問屋と連携し、「まぐろ解体ショー」をライブ配信。切り分けた希少部位などをその日のうちに、あらかじめ料金を支払った客に届けた。
「ユーザー参加型の“競り”もアイデアとしてある。商品の影響を広げたいと考える企業などにも利用してもらい、広告収益を得ることも考えられるだろう」(福崎氏)
このように、今はなくてはならないツールになっている、オンラインを利用しての新たなアイデアも広がる。
福崎氏がクックパッドマートによって目指すのは、食を豊かにすること。そしてもう一つ、自身のライフテーマとしての思いもあるという。
「世の中は外的環境で大きく変わる。地震、豪雨、そして今回のようなパンデミック。世の中に大きなうねりがあったとき、耐えられるインフラが必要だ。一箇所に問題が出るとすべてが止まるような依存度の高いインフラでは多大な影響が出る。クックパッドはたくさんの人の多様性を受け止めてコミュニティをつくってきた。つまり依存度が少ない自立分散型の仕組みだ。今、クックパッドマートのようなインフラは我々にしか実現できないと自負している」(福崎氏)
クックパッドマートの反響は、マンションの無料設置についてはコロナ以前に比べ問い合わせが数十倍に、ユーザーは5倍に増加しているという。住民への設置説明会を経る必要などもあり、設置までの時間がかかる。しかし全体に、順調に伸びていると感じているそうだ。
サービスの特徴が、不便や感染のリスクを避けるため、というマイナスの発想ではなく、一歩、二歩進んだプラスの発想から生まれていることだ。コロナ前と同じかそれ以下、ではなく、価値がさらにアップするのであれば、利用したいと思う人は多いだろう。次の課題は、サービスエリアや利用者がさらに広がったうえで、スムーズに運用されるかだ。
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