危ういJAL再建、更生法申請でも見えない将来像
一方、2社体制を維持すれば、「長期にわたり全便の運航を維持せざるを得ず、赤字が過大となる恐れ」と懸念したうえで、「法的整理後の二次破綻リスクの最大化」とも記している。
それどころか、専門家の間では早くも別の懸念も浮上し始めた。仮に計画達成が厳しくなれば、JALが取りうる最終行動がダンピング(不当廉売)だ。
自動車などと比べ、商品性があまり変わらない航空業界で顧客を奪うには手っ取り早い。外資系証券のアナリストは「JALは今でも国際線でダンピングを始めている。自力で資金調達してきたANAが巻き込まれると、競争の泥沼化で共倒れしかねない」と指摘。
業界関係者は「JALが旅行会社に流すキックバック(販売奨励金)は規制すべき。そこに税金が使われるのはおかしい」と非難する。ANAの伊東信一郎社長は20日、「公平な競争環境が歪む可能性がある」と、国交省の航空局長を訪ねて懸念を伝えたうえで、「日本の国際線を担っていく意欲は持っている」とJALを牽制した。
発着枠や就航路線、料金など一部で自由化されたものの、航空業界は規制に縛られており、政府が大きな裁量権を有している。
EU(欧州連合)では、公的資金が注入された企業に一定の競争制限がつくが、日本にはそうしたものは見当たらない。今後、成田と羽田の首都圏両空港が拡張される中、JALへの処遇次第で利益相反が疑われかねない。
国交省幹部は「発着枠割当でオークション方式も今後の検討課題」とするが、難しい舵取りを強いられるはずだ。
前原国交相は19日、今後の再生の姿について「日本でメガが2社いるのかということも含め航空行政全般をレビューすることが使命」と語った。命拾いしたナショナルフラッグ・キャリアの出口戦略は見えず、紆余曲折は必至だ。
(冨岡耕 撮影:代友尋、吉野純治 =週刊東洋経済)
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