勝者なきビール消耗戦、怒濤の新商品攻勢でも縮む国内市場
たとえばキリンは、硬度1000の仕込み水を使った「1000(サウザン)」を3月半ばに発売。対するアサヒは健康志向を意識して、アルコール度数高めながらも糖質オフの「ストロングオフ」という合わせ技で勝負。サントリーも糖質オフの「7種のホップ リラックス」を3月下旬に投入する。盛夏にかけて、さらなる新商品の追加も予想される。
一方、2年連続で最下位に沈んだサッポロビールは「ドラフトワン」の出荷価格引き下げという奇策に出る。第3のビールの第1号として04年に発売された同ブランドも、ライバル商品が激増したことで低迷。そこでリニューアルに伴い、価格で差別化を図る。
統合への下準備?
サッポロの値下げ攻勢に、ライバルが追随するかは微妙だ。サントリーは昨年7月からイオンとセブン&アイ・ホールディングスに「100円PBビール」の供給を始めたが、ここへきてPBの勢いは鳴りを潜めている。
同社によると、昨年7月以降の出荷数量はセブン&アイ向けが70万ケースに対し、イオンは26万ケースで「出荷回数は2度程度」(サントリー酒類幹部)にとどまっている。しかも今年度の販売計画にはPBの数量は見込んでおらず、消極的だ。
というのもサントリーホールディングスは現在、キリンホールディングスと統合交渉中。キリンはグループを挙げて価格訴求からブランド強化へ転換を図っており、従来からPBは「やるつもりがない」(松沢社長)。サントリーが統合を見据え、軌道修正を図っているとも見受けられる。
そもそも両社が統合を決めたのも、海外進出を加速したいから。縮む国内市場で新商品を濫発する消耗戦は、もはや限界を迎えつつある。
(倉沢美左 撮影:田所千代美 =週刊東洋経済)
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