EU首脳がコロナ後の経済再建へ合意した中身

難航協議の末、「欧州版3本の矢」が動き出す

復興基金という難題だけに集まって協議。スペインのサンチェス首相(左)、フランスのマクロン大統領、ドイツのメルケル首相が文書を見ながら話し込む(写真:John Thys/Pool via REUTERS)

コロナ危機からの経済復興を目指すEU(欧州連合)の首脳会議は18~21日の5日間に及んだ協議の末に、ようやく欧州復興基金を創設することで合意に達した。

協議ではオランダなど倹約国が返済を前提としない財政資金の規模縮小や復興計画の監視強化を執拗に要求。政府による司法への介入をEUから批判されているハンガリーなど東欧諸国は、EU予算の配分と「法の支配」を結びつけることに強く反発した。

結局、欧州委員会の原案にあった総額7500億ユーロ(約92兆円)の基金規模は維持した一方で、さまざまな妥協を行って決着した。

①補助金(返済不要)と融資(要返済)の配分を52%対48%に見直し(当初は66.7%対33.3%)、②倹約国のEU予算の支払いを減免するリベートを維持、③復興計画からの逸脱を監視し、それに加盟国が一定程度関与できる仕組みを盛り込み、④実績データが入手可能な2023年の復興基金の配分方法をコロナ危機の経済的な打撃を反映する形に修正、⑤EUの基本価値に違反する加盟国へのEU予算の配分見直し方針を明記したものの、東欧諸国に配慮して大幅に文面を修正した。

今回の合意が決裂すれば、イタリアの財政不安が再燃する恐れがあったほか、加盟国間の亀裂が決定的となり、EUの結束が揺らぎかねない状況にあった。当初計画に比べて財政移転の規模が縮小したとはいえ、部分的な債務共有化が実現し、EUの結束が保たれ、来年からの復興基金の稼働に道が拓けたことは大きい。

復興基金は欧州版「3本の矢」をつなぐ

そればかりか、復興基金は欧州経済に対する評価を一変させる可能性を秘めている。復興基金は、金融政策、財政政策、成長戦略の「3本の矢」をつなぐ結節点となるためだ。

今回のコロナ危機では、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和や流動性供給の大幅な強化を打ち出し、金融市場の動揺封じ込めにひとまず成功した。

EU条約で財政ファイナンスが禁じられているECBは、ユーロ圏構成国の国債を一定のルールに基づいて購入しなければならない。各国の債務規模に応じた買い入れができないため、コロナ危機以前には買い入れ対象資産の枯渇が不安視されていた。

そうしたなか、EUはコロナ危機対応の時限措置として、財政規律の全面的な適用停止を決定した。欧州債務危機時に強化した厳しい財政規律に縛られ、欧州各国はこれまで柔軟な財政運営ができずにいた。今回の危機では頑なに財政黒字に固執してきたドイツも、大幅な財政出動に舵を切っている。

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