EU首脳がコロナ後の経済再建へ合意した中身 難航協議の末、「欧州版3本の矢」が動き出す

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合意にとって難関だったオランダのルッテ首相(写真:European Council)

ただ、債務不安を抱えるイタリアなどが大幅な財政拡張を繰り返せば、債務の返済能力が不安視され、債務危機が再燃するリスクがある。復興基金はこうした債務不安国にも返済を前提としない、つまり政府債務が増加しない形で、財政資金を提供し、コロナ危機対応での財政拡張を可能にする。

しかも、復興基金の財源となるのは、EU予算を裏づけに欧州委員会が発行する債券だ。各国が財政出動の原資に増発する国債とともに、ECBの買い入れ対象資産不足を緩和することにもつながる。

復興基金を利用する加盟国は、欧州委員会に復興計画を提出し、それが承認された場合に資金が提供される。資金の使途は、EUが優先課題に掲げる気候変動対策、デジタル化、構造改革関連の投資案件とされ、成長戦略としての要素も内包している。つまり、金融政策と財政政策との連携強化に加えて、経済活性化を促す可能性を秘めている。

景気回復、今回はアメリカよりも欧州が先か

若年層の高失業、加盟国間の経済格差、産業ダイナミズムの欠如などの構造問題を抱える欧州経済は、過去の景気後退局面では回復の足取りの鈍さが目立った。2008~09年の世界金融危機時も米国の実質GDP(国内総生産)が2011年前半には危機前の水準を回復したのに対し、ユーロ圏の水準回復は、2014年の終わりまでずれ込んだ。リーマンショック直後に欧州債務危機の激震に見舞われたためだ。

低成長が続くイタリアに至っては、今も危機前の水準を回復できずにいる。だが、今回のコロナ危機ではアメリカに比べて欧州の景気回復が先行する可能性がある。

アメリカでは4月にニューヨーク州を襲った感染の猛威が収まった後、経済活動を再開した南部や西部の州で感染者が急増している。1日当たりの新規感染者は6万人を突破し、過去最大を更新し続けている。図

欧州では3~4月にかけてイタリアやスペインが爆発的な感染拡大に見舞われたが、厳しい外出・移動制限で感染者が減少してきている。EU27カ国と英国の1日当たりの新規感染者数の合計は、4月上旬のピーク時に3万人を超えていたが、現在は5000人程度まで落ち着いてきた。欧州各国は5月以降、段階的な都市封鎖の解除を開始している。制限緩和後に局所的に感染者が増加する地域もみられるが、全体としては感染封じ込めに成功している。

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