リニア「ルート変更」静岡知事が明かす発言の裏

JR東海社長への「あいまい対応」の理由も説明

ところが、次官は知事の説明を「ちょっといいですか」と遮り、「流域市長が、坑口整備がトンネル工事と一体であると考えていることは承知している。そこを踏まえて切り離すことができないかと提案している。もし不安があるなら、具体的に何が不安なのか教えてほしい」と知事に迫った。

知事室で藤田次官(右)に挨拶する川勝知事(記者撮影)

これに対して、知事は「はっきりしていますよ」と自信満々。連日の豪雨で静岡工区のヤードに至る道が通れなくなったり、作業員宿舎の水道施設が使えなくなったりという被害が生じており、「こんな状況で誰が坑口整備をするのか。そんな危険な場所に作業員を行かせるのは現場を踏まえていない議論だ」と言い切った。

少なくとも県が7日にJR東海に示した文書には、工事を認めない理由として今回の豪雨には触れていない。だが、次官はそこには触れず、「自然環境の保全が目的の条例と作業員の安全確保に何の関係があるのか」と、正論で攻めた。

国交省と流域首長との対話認める

知事は、「言葉で安全を確保しながら工事できますと言っても、言葉と実際は違う。生態系の問題もJR東海は返事をしていない」と変化球で応戦したが、次官は「それは本体工事の話だ」とかわし、「条例を拝見したが、解釈を変えることはできないわけではない。検討できないかと申し上げている」と、攻めの手を緩めない。

知事は「工事はトンネルと関係ないと見ることもできるし、一体だと見ることもできる」と述べ、いったんは解釈が変えられる可能性に言及したものの、その後に「坑口の整備はトンネル工事と一体だというのが共通の理解だ」と整備を認めない立場をあらためて明確にした。

ここで、次官は話を別の方向に振った。「私たちのほうから大井川流域市町の首長に直接お話ししたい」。知事は2年前から各首長と一致団結していることを強調したが、次官は「今の状況を踏まえた新しい提案だ」として、「あらためてどういう懸念があるのか、一致点を見出す余地はないのかを知りたい」と話した。

知事は、昨年の国交省、静岡県、JR東海による三者協議を巡る国と県のごたごたや有識者会議の公開方法で県と国交省が対立していることを引き合いに出し、「誰が来るんですか。いったん信用を失った人が来ても誰も話を聞かない」といったんは否定した。しかし、その後、「万機公論に決すべしです。私が自分で決めているわけではない」として、国交省が流域首長と直接対話することを容認し、会談は終わった。

所要時間は1時間弱。当初予定は30分だったので、倍近い時間が議論に費やされたことになる。この間、藤田次官は坑口整備の開始について論理的に攻め続けたが、結局、川勝知事から言質を取ることができなかった。会談中、川勝知事は、国交事務次官人事に関する新聞記事を読んだとして、「まもなくほかの職に移られるというのに最後まで職責を果たそうとしている」と、藤田次官をたたえる余裕すら見せた。論理では藤田次官が勝っていたが、話術では川勝知事が一枚上手だった。

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