JR東海リニア延期も?静岡「水問題」迷走の構図 解決の道筋は見えそうだが、議論はゆっくり
リニア中央新幹線・品川―名古屋間の2027年開業が危機的状況にある。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で4月に一部の工事が中断された。この点については、JR東海は「すべての工区において工事が再開されている」という。「多くの工区でゴールデンウィークは工事を休む予定だったこともあり、この中断が開業に影響を及ぼすことはない」と、新型コロナの影響について心配する様子はない。
問題は静岡県内の工事だ。東京、神奈川、山梨、長野、岐阜、愛知の各都県では工事が進んでいる。しかし、静岡工区は山岳部が中心で、地表からトンネルまでの深さが最大約1400mという難工区にもかかわらず、いまだ工事が始まらない。
11kmの「難関」工事始まらず
国は2014年10月にJR東海の品川―名古屋間リニア工事実施計画を認可した。南アルプストンネルの両端に当たる山梨工区と長野工区はそれぞれ2015年、2016年に工事が始まり、いずれも工期は10年。静岡工区は2017年にJR東海とゼネコンの間で契約が結ばれた。すぐに工事に着手して、2026年11月に完了する予定だった。
国は認可にあたり、工事実施に際して地域の理解と協力を得ることや環境の保全を確実に実施することを求めている。静岡県は「南アルプスのトンネル工事は水資源や自然環境への深刻な影響を与えるおそれがある」としており、県内における工事に合意していない。静岡は県の北端をたった11km通過するだけだが、この部分の工事が終わらないとリニアは開業できない。
リニアの駅が設置されるほかの都県と違い、静岡県はリニアが素通りする。リニアが開業しても県民には恩恵がない。一方で工事に際して環境への影響というリスクを県民が負うことになる。そのため、静岡県の川勝平太知事が「静岡県にもメリットが必要だ」と主張したこともあったが、最近はおくびにも出さず、環境問題一本槍だ。
県とJR東海の間で環境への影響について何度も協議が繰り返されたが結論が出ず、国は県とJR東海の議論を科学的・工学的に検証し、JR東海に具体的な助言・指導を行う有識者会議を設置し、今年4月27日から議論がスタートした。
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