JR東海リニア延期も?静岡「水問題」迷走の構図

解決の道筋は見えそうだが、議論はゆっくり

JR東海が静岡県内で本格的な工事にこぎつけられるかどうかは有識者会議の結論を待つ必要があるが、それに先立つ5月20日、JR東海の金子慎社長が川勝知事に1通の手紙を送った。

そこにはこう書かれていた。「南アルプストンネルについては2027年時点での完成に向けて、工事は大変切迫した状況にあり、6月中にも上記のヤード整備等の準備を再開する必要があります」――。

静岡工区の着工時期は本来の計画から3年近く遅れている。当初は「バッファーを見込んで工期を設定している」と余裕を見せていたJR東海も、今では「6月中に(県の)了解が得られないと2027年の開業が難しくなる」(金子社長)と、危機感をあらわにする。トンネル掘削については有識者会議の結論を待つ必要があり、それまでは手をつけないが、ヤード整備などの準備工事だけでも先に実施したいというわけだ。

リニア中央新幹線のルート図(東洋経済作成)

静岡県とJR、かみ合わない議論

金子社長は川勝知事と面談し、状況を直接説明したいという。川勝知事は金子社長との面談そのものには前向きだ。しかし、工事現場に向かう林道の整備状況やヤードの予定地を視察した6月11日、川勝知事はヤードに通じる作業道が未整備だとして、「作業員の安全確保の観点から作業道の整備を優先すべきだ」と発言した。作業道が整備されていないと、工事現場で事故が起きたときに消防車や救急車が現地に向かえないからだという。作業道の整備完了を待っていては6月中のヤード整備着手は不可能だ。

さらに、「ヤード整備は有識者会議で議論されているトンネルの掘削とは別の作業」と主張するJR東海に対して、川勝知事は、トンネル予定地周辺の樹木伐採も本体工事と一体であるという考えを示した。一方のJR東海はトンネル掘削工事とは明らかに区分けできる作業があるとして、6月中の着工に一縷(いちる)の望みを残す。

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