ミネベアミツミ、「選択と集中」を拒否する事情 多品種・多国籍にこだわるユニーク経営哲学

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われわれの強みはコロナ禍でも赤字にならないことだ。例えば、ベアリングなどは自動車減産などで外部環境が厳しいが、他の製品でカバーできている。自動車だけ、航空機だけ、家電だけではなく、幅広い分野の製品群を持っている。外出が減ってもゲームが売れる。自動車が売れなくてもスマホが売れるというように、ある製品が悪くても他の製品がよくなる。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

市場では「選択と集中」がずっと叫ばれていて、私も社長になってからの11年間で何度も「なぜベアリングだけやらないのか」「いつまでモーターをやっているのか」などの批判を受けてきた。

そういうバランスをうまくとるようにまんべんなく製品をカバーするというリスクマネジメントを、私が社長になってから意識してやってきた。製品が多品種で、工場も社員も多国籍というところがわれわれのユニークさであり、こういうときでも赤字にならない足腰の強さにつながっている。今回のことで(これまでの経営戦略が)間違いないという確信をもった。

次の代に花が咲くかもしれない

――コロナ禍でもニンテンドースイッチなどのゲーム機が珍重されました。ゲーム機用部品の好調は予想外だったのでは。

何がよくなる、悪くなるかは予想がつかない。自然体で構えて何があってもそれに対応していく。全体が悪くなることはあるが、どこかが大きく下がっても、どこかが上がる構成になっているので、大きなサプライズはない。

かいぬま・よしひさ/1956年生まれ。1978慶應義塾大学法学部卒業。1987年ハーバード大学ロースクール法学修士課程修了。1988年ミネベア入社。取締役法務担当、欧米営業本部長などを経て、2009年代表取締役社長執行役員。2017年から現職(撮影:梅谷秀司)

今も何本もの新しい製品やプロジェクトを走らせていて、うまくいくものもあればなかなかうまくいかないものもある。例えば、スマホ液晶向けLEDバックライトはたまたまお客さんのニーズとわれわれの出したタイミングが合い、有機ELの採用が広がって(売り上げが)減ったとはいえ、収益を支えるまでの製品に成長した。

――スマートフォンなどに搭載されるOIS(光学式手振れ補正機構)も増加を見込んでいます。

(2017年に)ミツミ電機と経営統合をするときに、OISの売り上げは200数十億円だった。それが2020年度は1000億円を目標にしていて、今後2~3年で1500億円まで売り上げが伸びる。LEDバックライトの需要がピークアウトする中で、まさに第2のLEDバックライトになっている。これは消費者がきれいな写真を撮りたいと思っているからだ。

写真を撮るときには手が震えるが、それでもきれいな写真が撮れるのはOISで手振れを補正しているから。需要は大きいと思う。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、M&A(合併・買収)に対する考え方についても話している。
田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。報道部、『会社四季報』編集部を経て、現在は会社四季報オンライン編集部。食品業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、ドローン、医療機器など。趣味は東洋武術。

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