「出勤を再開する人」を増やす日本株式会社の闇 メンバーシップ型雇用が生み出す弊害

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日本企業での就職面接は、書類選考から始まる。そこで見られるのは、メンバーとして受け入れるのにふさわしいかという点における「地頭のよさ」と「勤勉さ」である。どこの大学のどの学部に所属しているか、つまり18歳時点の偏差値が高ければ「地頭はよい」「受験勉強に必要な努力もできる」と判断される。

面接試験では、組織に対するロイヤルティと協調性が判断される。先輩社員が面接をして「同僚とうまくやっていける性格の人間であるか」「組織に対してロイヤルティを持つタイプなのか」を判断する。有名大学の野球部やラグビー部出身者の評価が高いのは、経歴から“組織人間”であることが実証されているからである。

これを通った人は、課長・部長クラスの管理職面接にたどり着く。ここでは、「上司とのコミュニケーションがうまくできそうか」「人間関係をうまく築けるか」が評価される。この面接を通ればほぼ決まりで、最後は儀式としての役員面接で終わりである。

つまり、メンバーシップ型の就職面接で評価されているのは「組織に対する協調性・ロイヤルティの高さ」なのだ。

メンバーシップ型雇用での配属と昇進

こうしてめでたく採用された学生は、自分がどこの部に配属されるのかと希望に胸を膨らませ、4月1日を待つ。そして、そこで辞令が交付される。大学で法律を勉強してこようと、経済を勉強してこようと、文学を勉強してこようとお構いなく、会社の判断で経理、総務、人事、営業などの部署に配属される。

その後の転勤も自分の希望に関わりなく、会社の都合で行われる。経理のスキルで生きていこうと考えていた人が突然営業に回されたり、営業のプロになろうと思っていた人が突然海外転勤させられたりするのである。

その結果、でき上がるのが、これといったスキルがない、自分の働いている会社の人脈で生きる“会社人間”である。会社内の人間関係と社内政治に詳しく、上司の考えていることを忖度し、上司の意向に沿うように仕事を進めることは得意だが、社外で売ることができるスキルは何も持っていない人々である。

その中で昇進していくのは、ロイヤルティが最も高そうな人。その高さがどのように評価されるかといえば、上司の言うことを聞くかどうか、つまり「従順な人間であるか」である。こうして昇進競争は“イエスマン競争”となる。

いつもイエスということができない人、自分の意見を持ち、どうしてもそのとおりにやってみたい人は、不満を感じ転職を考えるようになる。しかし、こうした人は必ずしも恵まれない。なぜなら、売れるスキルがないから、転職先が見つからない。

次ページ運よく転職先が見つかったとしても…
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