東京の町医者から見えるコロナ感染蔓延の現実 持続可能な感染制御には細やかさが必要だ

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健康という物差しで考えた場合、高齢者にとって「自粛」はマイナスな点が多い。当たり前だが、感染していない人は感染源にならない。地域に感染者がいないのであれば、感染しようがない。

「そんなのわからないじゃないか? 無症候性感染がいるのだから」

そうツッコまれることはわかっている。しかし、無症候性感染者からの感染はそれほど多くないというWHO(世界保健機関)の報告もある。

そこでもともとの衛生能力が問題になる。

地域の高齢女性にとって、手洗いやうがいは「文化」になっている。旧式の住居はもちろん土足厳禁。そして風通しが非常にいい。職人の知恵は理にかなっている。そして女性は化粧をするから、あまり顔を触らない。

対して、高齢男性はガサツな人が多い。少々怖い話を交ぜながら、手洗いやうがいを指導する必要がある。もちろん「落ちたものを食べてはいけない」ということも付け加える。とにかく大切なのは「持続可能な感染制御」ということだ。

感染制御には「傾斜」が必要になる

台東区蔵前に「こばと園」というボランティア施設がある。幼稚園や保育園に入れない心臓病児に集団生活をさせてあげたいという理念で1976年設立された。

こばと園は緊急事態宣言が解除された後も、いまだに再開できずにいる。再開するに当たって指導をお願いされた。

正直、難題だ。心臓病児といっても重症度はさまざまだ。子どもたちの親御さんは自分と同世代。気持ちは痛いほどわかる。自治体や政府でも指針を出すことは難しいだろう。このような案件には専門家はいない。感染症の専門家が今、発信しているのは往々にして「マス」だ。ところが、さまざまな現場ごとの感染制御には性別、世代別、コミュニティ別に「傾斜」が必要になる。

施設を見学させてもらい、押さえておくべきポイントを指導することにした。子どもたちの自由度は低い。施設や家庭内以外で感染することはありえない。とすれば、大切なのは家庭内感染を制御することだ。この場合、感染源になるのは親であり、親への指導が最も重要になる。親の職業やライフスタイルはさまざまであり、個別指導と、守るべき存在がいるという親の自覚が大切になる。

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