部下に僕が本気であることが伝わったのは、それまでに決められていたCM制作をキャンセルしたときでしょうか。チームがよくないと言っているCMを撮るのはそもそもおかしい。カメラマンなどのキャンセル料を払った残りで自分たちが正しいと思う広告を作ることにしたんです。
数千万円のキャンセル料を支払っても半分の予算が残る。それで作り直そうと考えました。
こんな僕の提案をマイクは「すべて君に任せる」とOKしてくれました。それで、ようやくチームみんなの目つきが変わりました。
--残りの予算で作った広告とはどんなものですか?
チームと広告代理店といろんな案を出し、日本のサラリーマンを描くべく、当時タレント人気ナンバーワンだったT軍団に全員出演してもらうことになりました。
ところが、契約もできて撮影日も決まった段階で、Tさんがなんと不幸にも交通事故に。通常3カ月ほどかかる企画と制作を1カ月でゼロからやり直すことになりました。
でも、こういう追い込まれたときって発想の転換が出てくるんです。男性向けのドリンクだから男性タレントの起用をイメージしていたのですが、反対に女性でアプローチできないかという話が出てきたんです。
職場に疲れて帰って来たとき、女性がお茶を出してくれたらうれしいし、男性の気持ちに訴えるものは女性の言葉だったりしますよね。この発想が「男のやすらぎキャンペーン」を生みました。1カ月で新しいCMを作って販売現場のボトラー社幹部の前で発表会をやったら大好評でした。