福島駅「新幹線アプローチ線新設」はなぜ必要か 新型新幹線E8系の登場後、さらに便利になる

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今回、福島のアプローチ線が新設されることになったが、東北新幹線から秋田新幹線が分岐する盛岡でも平面交差が行われている。同じ問題が起こらないのだろうかと考えそうだが、大きく3つの理由で「現状で問題なし」と答える事ができるだろう。

東北新幹線では、東京方面から仙台・盛岡と向かうにつれて列車の本数が少なくなっていて、盛岡から先へ向かう列車は、東北新幹線のはやぶさと秋田新幹線のこまちが主体になっている。こまちや盛岡以北のはやぶさは毎時1~2本の設定なので、東北新幹線を頻繁に列車が走る福島と比べれば、列車の進路が干渉する機会が少ない。これが1つ目の理由だ。

2つ目の理由は福島と盛岡の分岐の違いで、福島ではホームを出てすぐに山形新幹線が分岐するが、秋田新幹線では分岐部が盛岡のホームから離れた場所にある。この結果、秋田新幹線が東北新幹線に合流して上りのホームに入るべく、渡り線のポイントが設置されているので、下り線を1回支障するだけで済む。

不測の事態にも対処できる

3つ目の理由は、上り線と下り線でホームを分けることができた結果、福島のように特定のホームに列車が集中する事態が避けられていることだ。現状では東北新幹線のはやぶさと秋田新幹線のこまちが盛岡で連結・切り離しの作業を行っているが、東京方面の連結作業は11番線で、逆の切り離し作業は14番線で行われ、負荷の分散が図られている。万が一連結や切り離しの際に故障した場合、福島では故障した列車が14番線に居座ることで他の列車にも影響して事態の悪化を招くが、盛岡では14番線で故障した列車が居座っても、11番線を使って連結と切り離しを同じホームで行うこともできる。不測の事態にも対処できる柔軟性を持っているわけだ。

今回、福島のアプローチ線を新設し、山形新幹線から東北新幹線の上りに直接接続することで、上り列車が下り線を横断することがなくなるほか、福島で線路を分けることで上下のつばさが競合することもなくなり、1つの列車の遅れが他の列車に波及するのを防ぐことができる。地味ながら、新幹線の安定運行には大きく貢献する事業なのだ。

柴田 東吾 鉄道趣味ライター

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しばた とうご / Tougo Shibata

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR・私鉄路線は一通り踏破したが、2019年に沖縄モノレール「ゆいレール」が延伸して返上、現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。『Rail Magazine』(ネコ・パブリッシング)や『鉄道ジャーナル』など、寄稿多数。

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