福島駅「新幹線アプローチ線新設」はなぜ必要か 新型新幹線E8系の登場後、さらに便利になる

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福島駅の14番線は東北新幹線の仙台方面に向かう下りホームの乗り場だが、つばさと連結して東京方面へ向かう上りのやまびこは下り線を横断して14番線に入り、連結作業を終えた後、また下り線を横断して東京方面に向かっている。

これらの連結作業が終わると、今度は下りのやまびことつばさの切り離し作業が14番線で行われる。これらの切り離しや連結作業の間に「はやぶさ」が追い越していくなど、大わらわの状況が1時間に1~2回繰り返されている。1時間あたりの回数が少ないようにも見えるが、上りのつばさが福島に到着してから下りつばさを福島から出発させ、また次の上りつばさが到着するまでの一連の流れでは20分ほどかかっており、つばさは毎時最大3本程度しか設定できない。

上り列車が下り線を2回横断し、しかも同じホームを上り列車と下り列車が共用しているために、つばさが遅れるとやまびこどころか福島で追い越しを行うはやぶさを待たせることになる。いったん運行が乱れると直ちに他の列車に波及する。しかも、東京方面では5つの新幹線が合流するから、1つの新幹線の運行の乱れが他の新幹線にも波及してしまう難点がある。今回のアプローチ線の新設は、こうした難点を克服する点で大きな意義を持っている。

15年も前にあった草案

福島の上りアプローチ線の新設計画はずいぶん前から話があった。15年ほど前に業界紙の論文で計画が発表されている。この論文では「喫緊のテーマ」とされているが、今回の発表では使用開始が2026年度とのことで、現実のものとなるまでに少なくとも20年の年月が費やされることになる。

新たに建設される上りのアプローチ線は、単純に分岐する現行のアプローチよりも構造が難しい。福島は在来線が地上、新幹線が高架という駅の構造だが、駅の北側には庭坂街道跨線橋という在来線をまたぐ道路があり、東北新幹線の線路は庭坂街道跨線橋をさらにまたぐ形となり、二層の高架構造で造られている。

上りアプローチ線の建設にあたっては、東北新幹線の線路をくぐり、急勾配を登って庭坂街道跨線橋をまたぐというルートで計画された。この勾配は33‰(パーミル)。1kmにつき33m上るという計算だ。東北新幹線では12‰の勾配を標準としており、かなりきつい傾斜だ。

また、上りアプローチ線のカーブもきつく、半径300mで設計された。その後の見直しでさらに小さい半径として新たな土地の確保を回避し、JR東日本の自社用地で建設できるようにしたほか、東北新幹線の高架線にある橋脚と極力干渉しないように設計され、かなり難しい工事を強いられる。きついカーブは、駅に近いために例外として許された設計で、高速で走る本線上であれば半径3000mなど、1桁違う数字で設計される。

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