ファミマが1000人超の希望退職者を出した理由 現場ファーストを理解できなければ生存不能

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澤田が現場での研修を受けてから、役員も続々と現場で仕事を経験するようになった。本部の社員も、現場が忙しい時期には積極的に駆けつけるようになった。

「何十社もの経営に携わって、失敗もしてきました。社長でござい、なんてわかったようなふりをして指示を出したって、誰も動かないですよ。そんなことより、現場を理解して、吐くくらい仕事をする。失敗してからは、ずっとそうしてきました。それがリーダーの仕事です」

澤田には、ユニクロでの強烈な原体験があった。売上高が400億円から4000億円規模の会社になるプロセスで、極めてわかりやすい大きな変化があったのだ。社長の柳井以外の役員が全員、入れ替わっていたのである。

「僕がユニクロに入ったときの役員は全員、退任されたんです。柳井さん以外。それから、柳井さんが目指す方向性を、各現場でリーダーとして実現できる人材が役員となりました」

企業のステージが変わっていくとき、経営陣も変わっていかなければいけないのだ。リーダーがそれを率先する。だから、いまのファミリーマートの役員は、猛烈に仕事をしていると澤田は語る。

「僕から圧倒的にやるしかないんですよ。全社員のなかで、僕がいちばん激しく働く、ということです。じゃなかったら、お前、言ってるだけで何もやってないじゃないか、と言われます。それでは、誰も言うことなんて聞かない」

挑戦する人だけがたどり着ける世界

ファミリーマートの改革は、まだまだ途上だ、と澤田は語る。コロナという逆風も加わったなか、どう変わっていくのか。ますます改革の難度は高まっている。だが、澤田の根底を貫いてきたのは、「逃げない」スピリットだ。その職業人生はまさに「挑戦者」ともいえるものだった。

前回の記事『父親の葬儀で知った「人は何のために働くのか」』に書いたように、澤田は伊藤忠商事で社長に直訴の手紙まで書いた。柳井正という経営者とともにユニクロを全国区にし、アメリカの巨大資本と組んで日本最大級のスーパー再建に挑もうとした。さらに自ら起業し、過去になかった業態に取り組んだ。

そしてコンビニという日本の社会を支える企業体、20万人を擁する巨大ビジネスの変革にいままた、挑んでいる。どうしても小売業をやりたい、と伊藤忠を離れてから20年。歳月の分だけ、「天命」への思いは深い。

そんな澤田の挑戦者スピリットは、いまやファミリーマートの社員はもちろん、全国の加盟店ネットワークにも広がってきている。

日本企業でいま、最も問われているのは、新たなチャレンジであり、イノベーションだ。そうでなければ、何も変わらない。何も動いていかない。新しい世界は生まれない。そんななか、社長はもちろん、社員、さらには加盟店のオーナーや店舗のスタッフも、変革の「挑戦者」だと答えられる会社は、間違いなく強い。

上阪 徹 ブックライター

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うえさか とおる / Toru Uesaka

ブックライター。1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒業。ワールド、リクルート・グループなどを経て、1994年、フリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍、Webメディアなどで幅広くインタビューや執筆を手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品は100冊以上。2014年より「上阪徹のブックライター塾」を開講している。著書は、『1分で心が震えるプロの言葉100』(東洋経済新報社)、『子どもが面白がる学校を創る』(日経BP)、『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)など多数。

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