ジム・ロジャーズ「年金はますます目減りする」 逃げ切れると思っているなら大きな間違いだ

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しかし、これからは円の価値が下がることを考えて行動しなければならないのです。ロジャーズ氏は警鐘を鳴らし続けます。「もちろんインフレにも警戒が必要だ。日本の財政はもはや危機的な状況にある。ここまで膨らんだ財政赤字を大きく改善することなどできないし、巨額の借金の返済などできるはずがない。歴史上、財政赤字で窮地に陥った例はたくさんあるが、いずれもきちんと返済できた例はない。結局はみな猛烈なインフレに襲われ、国民の資産価値は大きく失われることとなった」

年金がもらえても、円安とインフレで目減りする

すでに現役を退いている人はもちろん、現在50歳よりもちょっと上の世代も「自分たちの生きている間は大丈夫だろう」と思っている人が多いかもしれません。

しかし、ロジャーズ氏は言います。「日本円で保有する資産と年金をあてにしている人が多いのは想像できる。だが、そういう人ほど痛手が大きくなる。額面通りの金額を受給できたとしても、円安とインフレで実質的な価値は大きく目減りしてしまうからだ。財政破綻した旧ソ連の年金が、猛烈なインフレでその価値をほとんど失ったことを知るべきだ」

現在、会社員と専業主婦の夫婦2人の標準的な年金額は月22万円程度です。仮に30年後も同程度の金額がもらえたとしても、その時のインフレ率や円の価値次第では、現在から生活水準が大きく下がってしまう可能性もあるのです。

日本人がインフレのことを考えないのは、「失われた30年」でデフレ状態に慣れ過ぎているからかもしれません。しかし、戦後のインフレなど日本でもインフレが酷かった時代も多くあり、今後も同じような状態が永遠に続くとは言い切れません。

しかし、海外投資をすることによって、成長をしている地域から配当を得ることができる可能性が高まります(日本への投資がまったくダメということではありません)。

「1980年代や1990年代には、一般人が海外に投資するのは、ややハードルが高かったかもしれない。しかし、いまでは普通に海外の口座がつくれる。そもそも面倒くさいことが嫌いな人は、海外の株や債券のETF(上場投資信託)に投資すればよい」

実際、SBI証券や楽天証券などのネット証券ではアジアやアメリカ株などの取引が簡単にできます。税金の申告は必要ですが、今では、海外のオンライン証券や銀行口座なども開けることができます。

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