アップリンクのパワハラ訴訟が映す弱者の苦難 誰かの犠牲の上に成り立つ文化なんてない

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こうした態度は浅井氏だけに限らない。ベテラン社員から部下への暴言も日常的だった。誰かがミスをするとその場では注意せず、こっそり浅井氏に「告げ口」することもあった。

約2年間、契約社員だった浅野百衣さん(31歳)も、暴言に加え、上司から不払い残業を強制されていた。過重な業務を終わらせるため、終電近くまで働いていたある日、「何であなたは○×さんより仕事ができないのに、残業代がもらえると思っているの」などと言われ、タイムカードを切ってから働き続けた。月の残業時間が規定を超えた社員は、朝礼やほかの社員がいる場で浅井氏から叱責された。

【2020年6月30日12時55分追記】初出時、浅野さんが契約社員だった期間の記述が正確ではなかったので修正しました。

ベテランの社員は、パワハラを助長していたという。社内で抗議する人もいない。浅野さんは浅井氏に、日頃の言動などについて同僚2人とともに話をしたこともあった。しかし返ってきたのは、「議論する余地はない。会社に残るか去るかだ」という返事だった。

実際、入社してから同じ部署の社員は2人退職。それ以外にもパワハラに耐えられず、多くの人が会社を去るのを目にした。

世間への謝罪を優先

アップリンクは提訴を受けて、6月16日、19日に公式HP上に浅井氏名義で謝罪の声明を公開した。

ところがこれらは、原告への謝罪の申し入れや断りもなく、一方的に出されたものであった。

さらに、声明内で今後の取り組みとして言及された「社外取締役の設置」や「労働者との定期的な協議」などは、原告らが事前に提出していた協議案をなぞるものだ。浅井氏は代理人を通じ、これらの要求に沿って協議すると原告側に伝えていた。一方、原告側が現状公表する予定はないと伝えていた協議内容を、浅井氏は自身の代理人の了承も得ずに無断で公表。世間へのお詫びに先走った。原告は抗議のため6月22日、2度目の記者会見を行っている。

原告の鄭優希さん(25歳)は、「外から見たら、誠実な謝罪文に見えたかもしれません。しかし、常態化してきたパワハラが2〜3年のことであるかのように書かれており、これまで多くの人を痛めつけてきた実情がなかったことにされることを危惧しています」と怒りを込めて話す。

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