トランプ大統領再選の可能性はもうないのか 勝敗を分けるポイントは明確になってきた
現時点ではバイデン氏が優勢だが、トランプ落選を確実視するのは時期尚早だ。アメリカ政治は数週間あるいは数日で激変することがあり、大統領選までは残り4カ月以上もある。トランプ大統領は、①支持基盤固め、②大統領の信任投票ではなくバイデン候補との比較の構図をつくる、③ネガティブキャンペーンといった選挙戦略を効果的に実行することで劣勢挽回を狙っている。
1つめの点では、トランプ大統領は政治思想が異なる有権者の支持確保ではなく、支持基盤の投票率上昇に賭けている。トランプは就任式当日から選挙戦を始動したといえるが、これまでの戦略は支持基盤を固めるものであり、中道派や民主党を取り込む努力はほとんど見られない。
激戦州を中心に集会などで支持者の個人情報収集に励んできた。トランプ陣営のデジタルチームは2016年と比べて大幅に強化されている。集めた支持者の個人情報をもとにフェイスブックなどソーシャルメディアで関係を強化し、支持基盤固めを図っている。2016年大統領選では投票所に足を運ばなかった支持者の動員を狙っているようだ。
2つめに、選挙を自らの信任を問うものではなく、バイデン候補との比較の構図にすり替えることに成功すれば、再選は大いにありうる。
例えば、「社会主義」対「資本主義」、「エスタブリッシュメント」対「反エスタブリッシュメント」、「対中融和政策」対「対中強硬政策」、「増税」対「減税」、「妊娠中絶賛成」対「妊娠中絶反対」、「移民受け入れ賛成」対「移民受け入れ反対」など大統領候補の政策・イデオロギーについて有権者が選択する選挙となれば、共和党支持者の多くはトランプ氏の大統領としての資質など好ましくない要素には目をつぶって票を投じることもありうる。
激しさを増すネガティブキャンペーン
3つめは自らの支持者の投票率を上げることよりも、バイデン支持者の投票率を下げることで勝利しようとする戦略だ。お互いの弱点を突くネガティブキャンペーンはすでに激しさを増しており、今後、泥仕合は必至だ。
大統領はバイデン氏の息子ハンター・バイデン氏が中国で投資ファンドを設立した際にバイデン副大統領(当時)が中国政府に便宜供与を求めたと批判。直近ではトランプ陣営はバイデン氏と極左集団アンティファを同一視するテレビCMを流すことまでしている。6月20日、オクラホマ州タルサで開催された支持者集会でもトランプ大統領はバイデン氏について「過激な左派の無能な操り人形」と称した。
また、トランプ陣営は民主党内の分裂を狙っている。黒人の受刑率を高める要因となったとの批判もある1994年暴力犯罪防止・法執行法推進で上院議員時代にバイデン氏が中心的な役割を担ったことに対しては民主党内からも批判がある。例えばこの点をトランプ陣営がうまく追及すれば若者を中心にリベラル派がバイデン氏への投票をためらうこともありうる。
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