ルルレモン、「商品を売らない」異色の成長戦略 カナダ発「衣料品ブランド」が六本木に旗艦店
接客方針も独特だ。社内では販売員のことをスタッフではなく、「エデュケーター(商品のことを教える人)」と呼ぶ。「基本は商品を売ってはいけない」(リー氏)という方針の下、販売員は日常会話をしながら商品の特徴やおすすめの運動を教えたり、顧客から個別の商品に対する要望や意見を聞いたりすることを重視している。
試着室には、顧客とスタッフが立ち話できるスタンドが設置されている。コミュニケーションが自然と生まれるようなサービスと売り場作りが徹底されているのだ。
営業利益率22%を支える顧客基盤
店舗ごとに顧客との強いつながりがあるため、ルルレモンでは顧客の来店頻度やリピート購買率が非常に高い。営業利益率22%という小売り企業では突出した高収益を誇る背景には、こうした強固な顧客基盤と、値引き販売を最低限に抑える在庫管理の緻密さがある。
一部の主力商品を除いて多くの商品は小ロット生産が基本で、店舗には毎週1回新商品が入荷される。新商品の投入枚数などを決めるに当たり、スタッフが日頃のやりとりの中で聞いた顧客からの声を積極的に反映させている。
「サイズやカラー別の商品数量を当てずっぽうで決めるのではなく、リアルな顧客の声や数字(顧客データ)を基に投入するとヒット率が高くなる。プロパー(定価販売)での消化率は他ブランドと比べて相当高い」(リー氏)。
コロナ禍で店舗でのイベントはほとんど中止となったが、代わりにオンライン上でのレッスンを開催した。販売面でも、顧客のロイヤルティの高さを土台にECで一定の売り上げをカバーできる点が強みだ。
6月11日に発表された2020年2~4月期の業績は、実店舗の売り上げが前年同期比48%減と大幅に落ち込んだ一方、従来売り上げの3割程度を占めていたECが同67%伸びた。全社売上高は6.52億ドル(約697億円)と同17%減にとどまった。
地域に根を張って顧客とのコミュニティ形成を重視する戦略は、事前準備に相応の時間と苦労を伴う難しさもある。新たに進出した地域ではすぐに出店拡大をせず、2~3年は顧客の反応を見ながら現地の需要に合った商品構成やイベントのあり方を吟味する。
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