ルルレモン、「商品を売らない」異色の成長戦略 カナダ発「衣料品ブランド」が六本木に旗艦店

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株式市場の評価も高まっている。アメリカ・ナスダック市場に上場するルルレモン・アスレティカの株価は2019年末時点で1年前のおよそ2倍をつけ、時価総額は約4兆円に拡大している。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月の株価は急落したが、その後は急速に回復。5月下旬~6月上旬にかけては最高値を更新し、時価総額はアメリカの衣料品大手・ギャップの約10倍に達する。

国内の小売関係者も「ルルレモンは独自のブランディングで他社と差別化できていて学ぶことが多い」(アパレル大手幹部)と一目を置く。

日本には2006年にデサントと合弁会社を立ち上げ進出したが、わずか2年で撤退。その後ルルレモン・アスレティカの単独出資で日本法人を設立し、2016年に再上陸を果たした。一度撤退した経緯について、リー氏は次のように振り返る。

重視するのは「コトの体験」

「ルルレモンで重視するのは、モノを売るより(店舗で)コトを体験してもらう点。自分たちが運営する店で顧客と直に接し、顧客からのフィードバックを次の商品作りに生かすことは、JV(共同企業体)だとなかなか自由に出来なかったため、仕切り直しをした」

この体験ができる店舗こそ、他のブランドにないルルレモンの最大の特徴だ。ルルレモンはどの店舗でも定期的にヨガレッスンやランニングなどのイベントを開催し、顧客と密接な関係を構築する。

ルルレモンは創業当初から店舗でヨガスタジオを運営し、地元の人が集う場所となっていた。店舗はただ単にウェアを売る場ではなく、顧客の集まるコミュニティの場になっている。

イベントの開催頻度や内容は、新宿や原宿など店舗ごとに異なるが多くは無料で参加できる。イベントの予定は、店内に掲示された「コミュニティボード」や同社の公式ホームページ上で確認できる。売り場をイベント会場として利用できるよう、どの店舗も原則として床は段差のない仕様で、陳列棚などの什器もすべて可動式となっている。

日本法人のスチュアート・テューダー社長は、「(イベント開催の)目的は強固な人間関係を築き、ルルレモンとつながったコミュニティを作ること」と強調する。

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