障害者福祉施設が「解錠サービス」を始めた訳 鍵を開けることが利用者たちの達成感になる
知的・精神の重複障害を持つ20代男性のCさんは、鍵を開けるときだけニコニコ笑うという。
「想像ですけど、人生で何か達成したことがなくて、賞賛を浴びる機会がなかったのではないでしょうか。鍵を開けることで、達成の喜びを感じてくれるのはとてもよいことだと思います」
この仕事は、就労継続支援B型事業所の作業として認定されている。
「作業という色合いよりも、感動と喜びのほうが大きな仕事です。開けると彼らもうれしいし、私たちもすごいうれしい。他の人と会話できない人、黙って黙々と働き続ける人、無表情で喜怒哀楽のわからない人が、開いた瞬間に喜びを爆発させます。周りも拍手喝采で喜んでいます」
鍵を開けることのほかにも、いろいろな作業がある。取材日には、男性用脱毛ワックス商品の外箱を組み立てているところだった。また、ネジを一つひとつビニール袋に入れて、袋を圧着する作業も行われた。
作業所にもコロナの影響、収入が激減
B型の作業の工賃は安く、全国平均工賃は月額1万6118円、時給換算すると僅か214円だ(厚労省・2018年度の調査結果)。より作業が複雑なA型でも7万6887円である。
ただでさえ工賃が安いのに、コロナの影響で休業した各地の作業所では減収が問題になっている。「のんの」でも、A型のレストランを休業し、弁当の出前などのB型の作業も縮小したため、大幅に減収した。
のんのでは、近場に限られるが、お墓の掃除代行や、自転車の掃除代行といった作業を請け負うことも計画しているそうだ。
名人のAさんは、鍵を開けられないもどかしさもありながら、器用な手先を活かして、慶事に使う美しい「水引(みずひき)」を作っている。早く鍵が届くことを待ち望む彼らのため、ダイヤルキーの募集はいずれ再開される。
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