障害者福祉施設が「解錠サービス」を始めた訳 鍵を開けることが利用者たちの達成感になる
破格の依頼料とスピード感
自転車用の鍵を中古で購入したが、3桁の番号がわからなくなっていたところだった。指定された東京都足立区の「のんの作業所」に持ち込んでみた。依頼料は破格の「50〜100円(切手でも可)」。
切手を貼った返信用封筒と、工賃の50円切手をスタッフに渡した。1週間もしないうちに、開けられた鍵が返ってきた。解錠担当者直筆の「ありがとう」のメモも同封してくれていた。
解錠サービスについて、作業所に取材を依頼し、相談支援員へのインタビューを3月下旬に実施した。その1週間後に作業の様子も取材するはずだったが、感染対策のため、作業所は3月31日から休業することになった。
緊急事態宣言が解除された5月26日から段階的に作業を再開し、6月中旬になってコロナ前の状態に戻ったところで、ようやく取材もかなった。
「のんの」は株式会社てっぱんが運営する障害福祉サービス事業所の1つだ。知的障害者や精神障害者らが働く「就労継続支援A型・B型事業所」として、レストラン・惣菜販売、そして「ダイヤルキー解錠」も行なっている。
コロナ休業中、利用者は自宅やグループホーム(共同生活援助事業所)で鍵開けなどの作業を続けていた。
3月末には十数個あった鍵は、6月の取材日には残り1個になっていた。感染対策のため、鍵の募集を一時的にお休みしていたからだ。
のんのには3人の「鍵開け名人」がいる。楠原さんによると、名人たちは、ダイヤルキーを手にすると、3〜4桁の番号を「0000」から、「0001」、「0002」。1番号ずつカチカチと回し始め、ときには十数分、長い時には何時間でも根気よく取り組み、「鍵が壊れていなければ、必ず開けてしまう」のだという。