「大企業にいるだけの人」のあまりに厳しい未来 人材のプロが見てきた「真にできる人」
また、典型的な日本的考え方で「いい会社」とされる大手企業の多くでは、入社数年時点でコアメンバーを選出し、いわゆる出世コースに乗る人材とそうでない人材をふるいにかけます。つまり、入社して数年後には「出世コースに乗れず、指示がなければ仕事をすることができない」人材になってしまう可能性があるのです。
大企業に所属しているという安心感はあるかもしれませんが、出世が望めず、経験を積めない組織で働くことが、本当の意味で安定といえるでしょうか。僕は、そうは思いません。
これからは、「優秀さの定義」と「安定の定義」が、所属する会社ではなく個人に求められる時代になります。もう、「大企業に就職しさえすれば、一生幸せに暮らせる」といった、安易な考えは捨てましょう。
大企業 vs ベンチャー vs 外資系
とはいえ、世の中には大手企業にしかできない仕事というものもあります。
大規模な都市開発は大企業が旗を振って行うことが大半ですし、通信やインフラの事業など広い地域をカバーする仕事にも、ある程度の企業規模が必要でしょう。大企業では、豊富なリソースがあるからこそ可能な、文字どおり世界に貢献するスケールの大きな仕事ができます。
ただし、大企業は職務が細分化されているため、自分のやりたいことができなかったり、全体が把握できなかったりと、デメリットもあります。
例えば、セールスの業務にしても、大企業では切り出された特定の業務を担当することが少なくありません。しかし、少人数で仕事を回さなければならない中小企業やベンチャー企業では、早々にセールスフローの全体を把握することができるかもしれません。将来的に起業を目指したいのであれば、後者のほうが勉強になることが多いでしょう。
また、大企業は特定の決められた業務の中で「あなたはこれをやりなさい。そのためにこういうふうに動きなさい」と決まったパターンの中で動くことが多いです。
対してベンチャー企業では、ゼロベースで動くことが多いでしょう。決まった枠の中で動くのではなくて、ゼロから自分のつくりたい世界をつくっていくような醍醐味があります。
外資系企業も個人の自立した働きが求められますが、結果は日本企業よりシビアに見られるかもしれません。ある企業では、ハイパフォーマーはかなり優遇されますが、パフォーマンスが下がると途端にたたかれるような文化があります。
ちなみに、「大企業に就職することは、よくないことだ」と言いたいわけではありません。思考停止して、すでに過去のものになっている理想のワークスタイルを追いかけているようでは、自分らしく働くことは難しいということを伝えたいのです。
働き方の選択肢は、日々多様化しています。「副業」という新たな潮流も生まれ、大企業に所属しながらベンチャーと仕事をする人もいます。スキルを身につけ、早々にフリーランスとして活動する人もいるでしょう。
でも、この中でどれがいい、というものではありません。大切なのは、過去に築かれた王道のスタイルを盲目的に追いかけるのではなく、複数ある選択肢の中で、自分が何を選んでどう成長していきたいのか、どんな軸を持って働く場所を選んでキャリアをつくっていくのかを自分の頭で考えて行動することです。