「大企業にいるだけの人」のあまりに厳しい未来 人材のプロが見てきた「真にできる人」
一方で、企業も変わりつつあります。
僕の知る限り、日本は世界的に見ても“大企業信仰”が非常に強い国です。もしかすると、今この記事を読んでくれている人の中にも「有名大学を卒業し、有名企業に入社すれば、エリートになれる」と考えている人もいるかもしれません。
就活生向けに就職情報サイトを運営している株式会社マイナビの調査によると、学生が企業を選択する際のポイントとして、「安定している会社」が第1位に選ばれたそうです。もちろん、わざわざ安定していない会社に就職したいと考える人は、そう多くないでしょう。僕も学生だったら、「明日潰れる可能性がある会社」には就職したいと思いません。だから、この結果にはある程度納得をしています。
そんな風潮があるからか、入社2~3年目の若いビジネスパーソンの方の中には、「やっぱり大企業に入ればよかった」と思っている人もいるかもしれません。しかし、企業規模だけで、いい会社かどうかを判断することは正しいのでしょうか?
僕は今後、時代の変化に伴い、「いい会社」の定義も変わってくるように思います。
「いい会社に入りさえすれば、一生安泰」は幻想
企業に対する一般的なイメージとして、「企業規模=生命力」という誤解があると思っています。しかし、「大手企業は潰れない」というのは、間違いです。
たしかに、設立間もなくて売り上げも少ない会社を見れば、生命力があるようには見えないと思う方もいるかもしれません。でも、規模の大きな企業だからといって、生命力があるとは限らない。
大手企業が経営危機に陥り、海外の企業の傘下に入ることも少なくありません。海外の超有名企業を市場から撤退させるほどの勢いを持っていた東芝でさえ、現在こそ経営再建に向けた第一歩を踏み出しているものの、つい最近までは経営危機に瀕していました。
これらの例はあくまでワン・オブ・ゼムですが、事実、平成の30年間における上場企業の倒産件数は233件で、平均すると年約7.7件が倒産していることになります。
かつての日本には、「終身雇用」や「年功序列型賃金」という、「いい会社に入りさえすれば、一生安泰」な慣習がありましたが、正直にいって、もはや幻想です。
日系最大手である「トヨタ自動車」の豊田章男社長は、「終身雇用の限界」について言及し、経団連の中西宏明会長は、終身雇用について「制度疲労を起こしている」と発表しています。
近年、日本の経済的躍進を支えてきた大手企業が、大規模なリストラを敢行していることを考えれば、所属する組織に安定を求めることが、いかに残念な考え方であるかがわかると思います。