総花的な「公的支援給付」が生まれる歴史的背景

コロナ禍に思う「バタフライエフェクト」

確かに富裕層が所得、資産、そして時にはアングラ・マネーを秘しておきたいという気持ちをプライバシーと呼ぶのであれば、それを侵害することになるかもしれない。だが、プライバシーの自由を絶対視すると、これからも不確実な未来を生きる中で、生存権を守る政策は必ずスピードと正確さを欠くものになる。

これまでこの国では、プライバシーの自由の議論は盛んであったが、これとトレードオフの関係にある、不確実な未来の中での生存権保障インフラを整備する必要性の議論はあまりなされていなかった。

バタフライエフェクト其の壱「日本型軽減税率」

懐かしい話がある。2015年のことである。当時、2017年4月に消費税が10%に上がることが想定される中、軽減税率に関する議論がスタートしていた。そして9月10日に、財務省は、日本型軽減税率というものを打ち出してきた。

その大まかな内容は、買い物時にレジでマイナンバーカードをかざし、消費税2%分の還付ポイントを得て、後日、ポイントに基づいて一定の限度額の範囲内(報道によれば年4000円)で個人口座に還付されるというものであった。

この日本型軽減税率案は、ほぼ1カ月後の10月半ばには消える--。「安倍晋三首相は14日午前、首相官邸で自民党税制調査会長に内定している宮沢洋一前経済産業相と会談し、2017年4月に消費税率を8%から10%に引き上げるのと同時に食料品などの税率を据え置く軽減税率を導入するよう検討を指示した。中小事業者に過度な事務負担が生じない現実的な解決策づくりも求めた。財務省が軽減税率の代替案としてまとめた税と社会保障の共通番号(マイナンバー)カードを使って増税分を後から還付する案は撤回する」(日本経済新聞)ことになった。

ここに「自民党税制調査会長に内定している」とあるのは、「安倍晋三首相は10日、自民党税制調査会長に宮沢洋一前経済産業相を充てる意向を固めた。野田毅税調会長は最高顧問に退く。背景には消費税率10%時の負担軽減策を巡って難航する公明党との協議をてこ入れする狙いがあり、同党が主張する軽減税率を軸に検討が進む見通し」(日本経済新聞)という事情があったからである。

「日本型軽減税率案」が出されたとき、有識者からは「1人4000円ずつ配るほうが効率的だ。個人番号カードを普及させるという別の政策目的が混在しているのではないか」との新聞コメントもあったりした。たしかに言っていることは正しいのであろうが、「別の政策目的」とも言える状況が、まさに今、不測の事態の状況下で求められていたようなものであろう。

日本型軽減税率が実現され、皆が持つ一人ひとりのマイナンバーに通帳がひも付けされていたら、今の新型コロナの下で、どれほど機動的に動けただろうかと思ったりする――もしもあのとき……。バタフライエフェクトを思い出すというのは、そういうことである。

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