日経平均が長期上昇でも目先イマイチと読む訳 悲観する必要はないが複数の波乱要因に注意

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また同国での11月の大統領並びに議会選挙も、向こう半年以内のリスク要因だ。これは、大統領選挙の結果そのものについてではない。ドナルド・トランプ大統領の再選となれば、良くも悪くも現政権の継続で驚きはない。また、ジョー・バイデン前副大統領が大統領になった場合も、彼は前オバマ政権で中枢にいた人物で、政策面でサプライズはないだろう。

ただ、バイデン氏は、大企業より中間層の個人を重視する姿勢であるため、トランプ政権が2018年に実施した法人減税の一部あるいは全部を、撤回する可能性が高い。それは株価にとっては悪材料だが、その可能性自体はすでに市場で見込まれており、株価の方向性は大きくは揺らぐまい。

民主党の副大統領候補と米中関係が波乱要因か

それでも、場合によってアメリカ株の短期波乱要因となりうるのは、むしろ民主党の副大統領候補の指名だろう。バイデン氏は女性を候補に選ぶと公約しており、バーニー・サンダース氏を最後まで推した左派を取り込むため、エリザベス・ウォーレン上院議員を副大統領候補とする可能性はまだ残る。彼女は反ウォール街の姿勢が強いため、キャピタルゲインや配当に対する増税を打ち出す、との懸念が市場に広がる恐れはある。

とは言うものの、現時点では、女性で有色人種であるカーマラ・ハリス上院議員が候補として指名される可能性が高いようだ。直近の「Black Lives Matter」デモも、アメリカ国内政治面では大きな焦点となっているし、同じく副大統領候補として有力視されている、エイミー・クロプシャー上院議員(大統領候補レースで戦っていたが、途中で断念し、バイデン氏の支持に回った)が、非白人を副大統領候補とするよう、バイデン氏に申し入れたと、テレビで発言した。

上述のハリス氏は、ディベートの激しさで有名だが、政策の方向性自体は中道派で、白人の民主党員からも支持が厚いと言われる。ハリス氏が候補となれば、市場にとってはもっとも安心できる展開だろう。

一方、米中関係の悪化も、リスク要因だ。コロナ禍もあって、アメリカ国内で中国に対する不信感が強まっていることが、各種世論調査で示されている。このため、大統領候補も議会も、中国に対して強硬姿勢に出ることで、世論の支持を集めようとしがちとなる。

現時点では、米中両政府の高官が6月17日にハワイで会談を行なったなど、アメリカは「中国叩き一辺倒」でもない。それでも、選挙前に対中制裁が一層強まる可能性は否定できない。

以上の政治情勢を踏まえると、世界の株価がすっきりと上昇基調をたどるのは、11月の米大統領選挙後で、その前は日本株も含め、株価の上値は重いかもしれない。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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