「コロナで確定拠出年金ほったらかし」は最悪だ 会社はもっと適切な運用商品を用意すべきだ

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もう1つの理由としては、会社が商品選定の業務を委託している場合、その先が取引や融資、株主といった強い立場にある金融機関やグループ会社であることが多いので、コロナの影響で苦しいこの時期に彼らの意に沿わないことは言い出しにくいということがあろうかと思います。つまり、金融機関にとってうまみのある、高い信託報酬の商品を除外してくれとは言いがたい状況になっているということです。

しかし、会社が取引先との関係を維持することと、企業型DCの加入者の運用商品を適切なものにすることとは別の話ですから、それを理由に「除外」を先延ばしすべきではないと思います。それこそ「加入者に対する忠実義務」違反です。

加入者から見直しを促すことも可能

実は、企業型DCの商品見直しを事業主にお任せするだけでなく、加入者からアクションを促していくことも可能です。もし企業型DCの加入者で、今の商品ラインナップに満足していないという場合は、勤務先や契約金融機関の事務局にその声を届けてください。

ちなみに、各運営管理機関が選定可能な商品は2019年7月から公開されています。金融機関としてはあまりチェックしてほしくないリストのため、金融機関のサイトで探すのは非常に難しいですが、厚生労働省が2020年に各運営管理機関の商品一覧のページを作っています。これを活用すれば簡単にアクセスできます。

確定拠出年金法では、事業主に対し、加入者のために忠実に制度運営を行うことを義務として定めています(第43条)。事業主は加入者からの声を真摯に受け止め、見直しを検討しなければならないのです。それをしないというのであれば、理由をきちんと説明する。そうした責任ある制度運営が求められます。

見直しを放っておいたまま時間が過ぎれば、加入者の運用期間は短くなっていきます。企業型DCを導入している会社の担当者は、ベストな運用機会を提供するため、コロナを言い訳にするのではなく、積極的に商品見直し、入れ替えを進めることをぜひやってほしいと思います。

大江 加代 確定拠出年金アナリスト

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おおえ かよ / Kayo Oe

大手証券会社に22年勤務、サラリーマンの資産形成にかかわる仕事に一貫して従事。退社後、夫の経済コラムニストである大江英樹氏(株式会社 オフィス・リベルタス 代表)を妻として支える一方、確定拠出年金の専門家としてNPO確定拠出年金教育協会 理事、企業年金連合会 調査役として活動。野菜ソムリエの資格も持つ。

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