「コロナで確定拠出年金ほったらかし」は最悪だ 会社はもっと適切な運用商品を用意すべきだ

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確定拠出年金の商品ラインナップの大半は投資信託が占めます。その運用にかかる手数料の「信託報酬」は、この5年ぐらいで劇的に下がりました。iDeCoの商品ラインナップでも、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券といった代表的な資産クラスのインデックス型商品の最安水準は、この3年で4分の1ぐらいになっています。

同タイプの商品をコストが高いまま並べていると、iDeCoの加入者は他社にいってしまうので、コストの安い商品を追加したり、新しいプランを作ったりしながら商品の新陳代謝が進んできたのです。

本来なら、コストの高い、運用成績の振るわない商品は除外され、入れ替えが進むべきなのですが、確定拠出年金制度では2018年4月まで「商品を除外する際には商品保有者全員の同意を得なければならない」という厳しい制約があり、事実上除外するのは不可能でした。

そのため、iDeCoについては金融機関各社が知恵を絞り、「コスト安の商品をそろえて新しいプランを作る」といった苦肉の策で乗り切ってきました。しかし、企業型DCではそうした動きが乏しく、商品見直しは進んでいないのです。

商品の「除外」ができない会社側の思惑

実は企業型DCでは商品見直しができない、というわけではありません。法改正によって、2018年5月1日からは「商品保有者のうち3分の1以上の人の反対がなければ除外できる」ようになり、環境は整ってきています。

実際、見直しを実施したところもあります。その第1号は日立グループで、低コスト商品を採用し、商品数も18本から9本に絞り込むという大胆なもので、大変な話題になりました。そのほかにも企業型DCの商品ラインナップを見直す動きが徐々に出てきています。しかし、商品の見直しにおける「除外」の動きについては、コロナの影響で止まってしまったのです。

その理由は大きく2つあります。1つは「除外」が「売却」を伴うからです。とくにマーケットが下がっている局面では、敬遠されることになります。商品がラインナップから除外されると、新規にその商品を購入できなくなるだけでなく、その保有残高(2018年5月1日以降に購入した分)を売却しなければなりません。

会社側は、商品が除外の候補となった時点で社員に告知し、ほかの商品に乗り換えが可能なことや、同タイプの商品でいいものがあることなどを伝えて乗り換えを促すことになります。しかし「なかなか乗り換えてくれない」といいます。とくにマーケットが下がっている局面では難しい。そんなときにわざわざ「除外」して「売却」を実施すれば、どうなるか。社員とのトラブルを抱えたくないという気持ちになるのも無理はありません。

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